新型コロナウイルス感染の収束が見えないなか、先進国を中心に株式市場は活況を満ちています。実体経済との乖離も指摘され、警報を鳴らす専門家も多いなか、注目されているのがフィリピン株式です。その理由を、現地で日々フィリピン経済を調査している一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクター、家村均氏が解説します。

フィリピン経済…高度成長期の日本の再現となるか

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今、国際分散投資がますます重要になってきています。

 

日本の株式市場も30年ぶりの活況を呈していて、1989年につけた最高値を目指すような動きになってくるかもしれません。ただ一方で世界でもダントツの超高齢化社会に突入している日本がかつて経験したような高度経済成長をむかえるということは現実的ではありません。

 

ですから、低成長の日本にいながらにして、高成長を取り込むためには、新興国の中でも発展ポテンシャルの高いフィリピンのような国に株式投資をし、その成長を取り込んでいくという選択肢が有効だと考えます。

 

株式時価総額から見ても、現在のフィリピンの株式時価総額は約30兆円程度で、これは日本の1970年くらいの水準です。当時日本では、日本列島改造論などで、新幹線、高速道路、鉄道などのインフラ建設が活況を呈し、都市のスクロール化で郊外の開発がどんどん進んでいました。

 

筆者はフィリピンにいることが多いのですが、フィリピンのドテルテ大統領の“Build Build Build, Link Link Link”のインフラ政策などは、まさに当時の日本と同じ動きです。つまりフィリピン経済成長過程というのは、日本の1970年くらいの経済レベルですので、これからの大きな経済成長、株価上昇が期待できます。

 

現在の日本の株式時価総額が700兆円ですから、1970年当時の30兆円から23倍になっているわけですので、フィリピン株も大きなポテンシャリティーがあると考えられます。

 

フィリピン人で証券口座を持っている人は全人口の1%程度です。日本では全人口の20%程度の人が証券口座を持っているのとは対照的に非常に低いです。市場参加者が多くなれば、株式市場の底上げになるのはいうまでもありません。これからフィリピン人の所得も増加していき、株式投資を始める人もGDP成長とともに増えていくでしょうから、その意味でもフィリピン株式市場の底上げが大いに期待できるわけです。

 

また機関投資家の投資行動に大きな影響を与える格付けですが、なんとコロナ・パンデミックの真っ最中である2020年6月に日本格付け研究所は、フィリピン国債の格付けを一段階引き上げ、A-としました。これで、格付けはタイ(A-)と並び、インド(BBB+)、インドネシア(BBB+)を上回ったことになります。

 

理由は、堅調な内需を背景にした高水準かつ持続的な経済成長パフォーマンス、GDP対比で低水準に抑制された対外債務や外貨準備の蓄積等にみられる対外ショックに対する耐性、堅固な財政基盤、健全性の高い金融部門などが評価されたからでしょう。

 

足元では新型コロナウイルス感染拡大抑制のための検疫措置の実施に伴う経済活動の停滞を背景に、フィリピン経済に下方圧力がかかっています。しかし、これまでに強化されてきた経済基盤や堅固な対外ポジションに加え、政府が策定したGDP比9%超の経済対策の効果から、経済の落ち込みは限定的にとどまるとみられています。財政赤字は拡大するものの適正な財政政策の運用であり、政府債務も比較的低位に抑えられることから、財政基盤の健全性が損なわれることはないとの分析しているのです。

 

ドゥテルテ政権が看板政策として推進してきたインフラ開発政策も着実に進展しているため、政府は、経済回復を促進しかつ成長ポテンシャルを高める手段として、インフラ開発について予算規模は調整しつつも強力に進める方針を堅持しています。また税制改革についても、法人税減税および望ましい投資を呼び込むための企業税制優遇合理化を含む「パッケージ2」法案の早期実現が感染拡大の影響を受けた企業支援の観点から重要であるとし、その速やかな成立に向けて動くなど、総じて改革のモメンタムに変化はありません。以上より、格付を1ノッチ引き上げ「A-」とし、見通しを安定的としました。

 

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