2020年、新型コロナの感染拡大で世界の自動車産業も大きな打撃を受けた。ほぼすべての自動車メーカーが巨額赤字を計上するなか、トヨタ自動車は2020年4月~6月期の連結決算(国際会計基準)では、当然のように純利益1588億円の黒字を叩き出した。しかも、2021年3月期の業績見通しは連結純利益1兆9000億円と上方修正して、急回復を遂げる予想だ。トヨタ自動車はいったい何を行ったのか、そして命運を分けたものは何だったのかを連載で明らかにする。本連載は野地秩嘉著『トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

毎日、会議で即決、現場に指示して実行する

通常、世の中の組織における危機管理は次の6段階で行われる。

 

①予見と予防

平時から危機に備えておく。兆候を少しでも早くとらえて予防措置を取る。

 

しかし、実際はなかなかこの通り実行している組織はない。個人でもやっていない人が大半だろう。危機管理のなかでもっとも難しいのが、平時における予見、予防と準備だ。

 

②情報の収集と危機状況

の把握危機が起こった後、情報を集めて、何が起こっているかを把握する。ただし、情報の収集にはプロの目がいる。初めて危機に対応する人間が収集した情報では心許ない。

 

③危機の評価と対策の検討

危機によって生じる損失や被害を評価する。

対策を決めるためには情報を評価できなければならない。

 

危機対策にかかわるコスト、人員を評価し、具体的なアクションを決めて、行動計画を作る。

 

④対策の実行

行動計画を決定し、実行する。

 

⑤対策の再評価と修正、変更

行動計画が実施された後、効果が上がっているかを絶えず評価しながら、追加の対策を行ったり、計画を修正したりする。

 

⑥記録を残し、次の危機に備えての準備をする

危機が収束したら、計画と行動の評価をして、すべて記録しておく。それが次の危機に対する準備になる。

 

問題は、危機の際には時間をかけずに実行しなくてはならないことだろう。情報の収集に2日間かけて、評価に2日間かけて、それから対策を立てるのに1週間もかけていたら、とても間に合わない。ひとつの段階が終わらなくとも、情報収集をしながら、評価し、対策を立てて実行することだ。

 

トヨタの場合は情報の収集から対策の実行、修正まで、すべて対策本部で完結させている。毎日、会議を開いて、その場で即決し、現場に指示して決行してしまう。トヨタの危機管理が何よりも重要視しているのはスピードだ。危機対応でもトヨタ生産方式における「リードタイムの短縮」を肝に銘じているのだろう。

 

野地秩嘉
ノンフィクション作家

 

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