毎日、会議で即決、現場に指示して実行する
通常、世の中の組織における危機管理は次の6段階で行われる。
①予見と予防
平時から危機に備えておく。兆候を少しでも早くとらえて予防措置を取る。
しかし、実際はなかなかこの通り実行している組織はない。個人でもやっていない人が大半だろう。危機管理のなかでもっとも難しいのが、平時における予見、予防と準備だ。
②情報の収集と危機状況
の把握危機が起こった後、情報を集めて、何が起こっているかを把握する。ただし、情報の収集にはプロの目がいる。初めて危機に対応する人間が収集した情報では心許ない。
③危機の評価と対策の検討
危機によって生じる損失や被害を評価する。
対策を決めるためには情報を評価できなければならない。
危機対策にかかわるコスト、人員を評価し、具体的なアクションを決めて、行動計画を作る。
④対策の実行
行動計画を決定し、実行する。
⑤対策の再評価と修正、変更
行動計画が実施された後、効果が上がっているかを絶えず評価しながら、追加の対策を行ったり、計画を修正したりする。
⑥記録を残し、次の危機に備えての準備をする
危機が収束したら、計画と行動の評価をして、すべて記録しておく。それが次の危機に対する準備になる。
問題は、危機の際には時間をかけずに実行しなくてはならないことだろう。情報の収集に2日間かけて、評価に2日間かけて、それから対策を立てるのに1週間もかけていたら、とても間に合わない。ひとつの段階が終わらなくとも、情報収集をしながら、評価し、対策を立てて実行することだ。
トヨタの場合は情報の収集から対策の実行、修正まで、すべて対策本部で完結させている。毎日、会議を開いて、その場で即決し、現場に指示して決行してしまう。トヨタの危機管理が何よりも重要視しているのはスピードだ。危機対応でもトヨタ生産方式における「リードタイムの短縮」を肝に銘じているのだろう。
野地秩嘉
ノンフィクション作家