ブラジル中銀、フォワードガイダンス変更の意味

ブラジル中銀は市場予想通り政策金利を据え置きましたが、期待並びに予想インフレ率がインフレ目標に近い限り緩和的な政策を維持するとしたフォワードガイダンス(政策の指針)を取り下げることでタカ派(金融引締めを選好)寄りの姿勢を示しました。利上げ時期の前倒しが想定されますが、ブラジル経済の先行きにも不透明感があり、難しい判断を迫られそうです。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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ブラジル中銀:市場予想通り政策金利を据え置くもフォワードガイダンスを変更

ブラジル中央銀行は2021年1月20日、市場予想通り政策金利を2.00%で据え置きました。据え置きは20年12月の前回会合に続き4会合連続となります(図表1参照)。

 

日次、期間:2019年1月22日~2021年1月22日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ブラジル政策金利とレアル(対ドル)の推移 日次、期間:2019年1月22日~2021年1月22日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

ブラジル中銀は声明文で、インフレ期待などがインフレ目標に近い限り、長期間に渡って金利を低く維持するというフォワードガイダンス(政策の指針)を削除すると発表しました。ただ、現時点で経済成長の今後のシナリオに不透明感が引き続き強いことを踏まえ、フォワードガイダンスの変更は必ずしも利上げを意味しないとも説明しています。

どこに注目すべきか:ブラジル中銀、フォワードガイダンス、予想

ブラジル中銀は市場予想通り政策金利を据え置きましたが、期待並びに予想インフレ率がインフレ目標に近い限り緩和的な政策を維持するとしたフォワードガイダンスを取り下げることでタカ派(金融引締めを選好)寄りの姿勢を示しました(図表2参照)。利上げ時期の前倒しが想定されますが、ブラジル経済の先行きにも不透明感があり、難しい判断を迫られそうです。

 

時点:2020年12月と2021年1月、予想は20年(12月分のみ)から22年 出所:ブラジル中銀のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ブラジル中銀のインフレ率予想と前提条件 時点:2020年12月と2021年1月、予想は20年(12月分のみ)から22年
出所:ブラジル中銀のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

まず、わずか5ヵ月前に導入したフォワードガイダンスを取り下げる背景となったインフレ率を確認します。年初に発表された12月の消費者物価指数(IPCA)は前年比4.52%とインフレ目標を上回っています。ただし声明でも述べているように上ブレの背景は商品や食料品価格の(短期的)上昇で、ブラジル中銀は上ブレの落ち着きを想定しています。

 

次にインフレ率予想を見ると、昨年12月に21年のインフレ率予想を3.40%としていましたが、今回3.60%に引き上げました。中国経済回復による輸出環境の改善、原油価格の上昇、財政政策の下支えでブラジル景気が回復傾向であることなどが背景と思われます。

 

なお、通貨レアルは新型コロナウイルスが中国で感染拡大した昨年年初の急落下局面に比べれば足元落ち着いていますが、実質政策金利がマイナスとなっていることもあり回復は鈍くなっています。そこでインフレ率予想の前提の政策金利を見ると21年は3.25%が想定されており、現在の2.00%は年内引き上げられる可能性を示唆しています。

 

さらに、12月の予想では21年の政策金利を3.00%としており、政策金利の前提を3.25%に引き上げたことで、利上げ時期の前倒しが想起されます。このあたりがブラジル中銀が今回タカ派寄りと見られた背景と見ています。

 

もっとも、ブラジル中銀がフォワードガイダンスの変更は必ずしも利上げを意味しないと念を押したのは本音と思われます。新型コロナウイルスの状況が楽観できないからです。世界最大規模の祭り「リオのカーニバル」についてリオデジャネイロ市長が開催中止の意向を示すなど依然状況は厳しいままです。

 

また、昨年は景気を押し上げた財政政策ですが財政の制約に直面し21年度のコロナ対策費用は計上が遅れており、景気への影響が懸念されます。インフレ率上昇とレアル安を抑制するために利上げの準備は進めるものの、感染動向や財政政策を確認してから利上げに着手する展開が想定されます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ブラジル中銀、フォワードガイダンス変更の意味』を参照)。

 

(2021年1月25日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

 

 

 

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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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