欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が指摘するように、米国ほどではないにしろ、ユーロ圏の長期金利も年初から上昇しています。ただ米国と異なり、ユーロ圏の景気回復は製造業を除けば鈍いままです。一方でユーロ圏のインフレ率はテクニカルな上昇分を除けば水準は低く、債券購入の柔軟性を高めることは予想通りですが、運営方法に不透明感が残ります。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

調査官は重加算税をかけたがる
税務調査を録音することはできるか?
5/19(日)>>>WEBセミナー

ECB政策理事会:長期金利上昇懸念からPEPP購入ペースを大きく加速させると表明

欧州中央銀行(ECB)は2021年3月11日に政策理事会の結果を発表し、今後3ヵ月間の資産購入をこれまでより「かなり速いペースで実施する」と表明しました。

 

ECBのラガルド総裁は、市場金利の上昇を放置すれば経済のあらゆるセクターにとっての調達環境を尚早にタイト化させかねないと説明しています(図表1参照)。資産購入の具体策として、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の債券購入ペースを次の四半期に「大きく」加速させると表明しました(図表2参照)。

 

日次、期間:2020年3月11日~2021年3月11日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ユーロ圏の主な国の10年国債利回りの推移 日次、期間:2020年3月11日~2021年3月11日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

週次、期間:2020年4月3日~2021年3月5日、マイナスは償還のみの週 出所:ECBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ECBの資産購入(PEPP)の純購入額の推移 週次、期間:2020年4月3日~2021年3月5日、マイナスは償還のみの週
出所:ECBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:PEPP、利回り格差、PMI、金融環境、純購入額

ECBのラガルド総裁が指摘するように、米国ほどではないにしろ、ユーロ圏の長期金利も年初から上昇しています。ただ米国と異なり、ユーロ圏の景気回復は製造業を除けば鈍いままです。一方でユーロ圏のインフレ率はテクニカルな上昇分を除けば水準は低く、債券購入の柔軟性を高めることは予想通りですが、運営方法に不透明感が残ります。

 

まず、ラガルド総裁が懸念を示したユーロ圏の長期金利の動向と、ECBスタッフ予想にも示されたユーロ圏経済の状況のポイントを述べます。

 

ユーロ圏の主な国の10年国債利回りで、長期金利の動向を見ると、昨年末から約0.25%上昇しています。米国ほどではないにせよ、通常の利上げ1回分程度の利回りの上昇となっています。

 

ただ、昨年3月と異なり、ドイツと他のユーロ圏の国々との利回り格差は落ち着いています。イタリアはECBのドラギ元総裁が首相となった効果もあって利回り格差が安定しています。格付け会社がBB格と評価しているギリシャでも、利回り格差は比較的抑えられている点に注意も必要です。

 

ECBスタッフによる経済成長率見通しは前回(20年12月)と大きな違いはありませんでした。ただ、足元の景気を総合購買担当者景気指数(PMI)で見るとサービス業を中心に回復は鈍くなっています。一方、インフレ率は2月は前年比0.9%と、12月の同マイナス0.3%から上昇していますが、これは声明でも指摘しているように一時的な付加価値税の税率変更などテクニカルな要因です。基本はECBスタッフ予想のように、当面低水準での推移が見込まれます。

 

このような経済の中、ECBが1.85兆ユーロ規模のPEPPを2022年3月まで継続するという枠組みの中で購入ペースを加速するというのは想定通りでした。ECB内に長期金利上昇について懸念が共有されていない中で枠組み変更は難しい一方で、PEPPの週間純購入額は足元120億ユーロ程度で、購入額を加速させる余地は残されていたからです。

 

ただ、すっきりしないのは購入の判断基準が不明確なことです。購入を増やす理由を端的に表現しても「金利上昇を放置した場合の金融環境の引き締まり」と不透明感が残ります。周縁国との利回り格差が安定している中ではなおさらです。また、購入額の規模も、会見での記者からの質問に明確に答えませんでした。まあ、数字を見てからの判断となりそうです。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『想定されたECBの債券購入加速だが、不透明感も残る』を参照)。

 

(2021年3月12日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

\PR/ 年間延べ7000人以上が視聴!
カメハメハ倶楽部
「資産運用」セミナー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【5/7開催】ABBA案件の成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【5/8開催】使わない理由はない!?
金融資産1億円以上の方だからできる「新NISA」活用術

 

【5/8開催】「相続登記」を放置するとどんなトラブルに?!
2024年4月施行「相続登記の義務化」を専門弁護士がイチから解説

 

【5/9開催】認知症対策だけじゃない!
数世代先の相続まで見据えた資産管理・承継ができる
「家族信託」活用術

 

【5/9開催】「海外法人のつくり方・つかい方」
日本に居ながら自分の「分身」を海外に作るメリットは何か?

 

【5/11開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【5/12開催】良い案件を見つける3つの方策とは?
「日本型オペレーティングリース」投資の基礎講座

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧