中国全人代の成長目標が控えめな理由を考える

中国全人代で注目を集めるその年の成長率目標が今年は6%以上となりました。国際通貨基金(IMF)などの国際機関や市場の予想が8%以上の成長を見込んでいたことから保守的な数字という印象もあります。しかし、この違いが示すのは目標設定と成長予想の違いであり、他の経済目標を見渡すと、経済運営には正常化への意識が見え隠れしているように思われます。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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中国全人代:昨年は設定を見送った経済成長率目標を21年は6%以上に設定

中国で第13期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)第4回大会が2021年3月5日開幕しました。昨年は設定が見送られたGDP(国内総生産)成長率目標を21年については6%以上に設定しました(図表1参照)。

 

※インフレ率は消費者物価指数(CPI)上昇率、失業率は調査ベース 出所:ブルームバーグ、各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]全人代で示された主な経済目標の昨年との比較※インフレ率は消費者物価指数(CPI)上昇率、失業率は調査ベース
出所:ブルームバーグ、各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成

 

中国の20年通期の成長率は2.3%となりましたが、市場では21年の経済長率を8%以上と見込む声が大半となっています(図表2参照)。

 

四半期、期間:2010年10-12月期~2020年10-12月期、前年同期比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国GDP(国内総生産)成長率の推移 四半期、期間:2010年10-12月期~2020年10-12月期、前年同期比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:全人代、経済成長率目標、6%以上、雇用

中国全人代で注目を集めるその年の成長率目標が今年は6%以上となりました。国際通貨基金(IMF)などの国際機関や市場の予想が8%以上の成長を見込んでいたことから保守的な数字という印象もあります。しかし、この違いが示すのは目標設定と成長予想の違いであり、他の経済目標を見渡すと、経済運営には正常化への意識が見え隠れしているように思われます。

 

まず、過去に全人代で示された成長率目標を振り返ると2010年は「8%前後」が示され、15年には「7%前後」、新型コロナウイルス感染が拡大する前の19年は「6.0%~6.5%」が採用されました。

 

中国は過去、安定成長、もしくは成長の主役を投資から消費へと構造転換を進める過程で成長率目標をゆっくりと引き下げてきました。21年の成長予想に比べると低いと感じる目標も、実質的にはコロナ前に正常化を目指していた19年と同じ水準に戻しただけともいえそうです。

 

ただ、当たり前の話ですが中国当局も中国の21年の成長率が高いことは承知しているでしょう。もっとも、成長の中身を考えてみると、上昇要因の中には20年の低成長の反動や、2月の貿易統計で輸出が前年比60%を超えるなど特需ともいえる動きが含まれたようです。IMFが1月に公表した世界経済見通しで22年の中国の成長率予想を確認すると5.6%が予想されています。コロナのような大きな経済ショックが起きたときの不安定な成長率予想をベースに「目標」の大幅な見直しを回避したかったことが想定されます。

 

次に、地域によってコロナの影響度合いが違うこともあり、成長率見通しにバラツキがあることも目標を低くした要因かもしれません。地方政府が公表したGDP予想を見ると6.0%程度を想定するところが多く見られます。目標がノルマになってしまうと、財政、債務を拡大させて数字を作る懸念もあるだけに、過剰債務削減を目指していたコロナ前の水準を意識したようにも見られます。

 

成長率だけでなく、1100万人とした新規雇用者数や、失業率も19年と同水準です。消費主導経済による正常化への回帰が見え隠れする経済目標と見ています。

 

しかし、財政赤字対GDP比率は、昨年の3.6%超から3.2%へと縮小させてはいますが(図表1参照)、市場予想(3.0%)を上回りました。財政の崖のように経済政策運営を急速に変えることはしない、ということだけなのかもしれません。一方で、中国はワクチン接種は遅れているなど、感染収束は早かったものの、経済成長に課題は残されているのかもしれません。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国全人代の成長目標が控えめな理由を考える』を参照)。

 

(2021年3月9日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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