ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

住宅改修は介護状況に合わせて時期を判断する

在宅で暮らし続けるには住まいの改善は大事なポイント

 

住宅改修費は、要支援・要介護認定を受けている人が手すりの取り付け、スロープの設置など、在宅で安心して暮らし続けるために住宅改修を行った際、20万円を上限として介護保険から負担割合に応じて費用の7~9割が支給される制度です。入院中や施設入居中でも自宅復帰前提ならば、改修可能です。

 

対象となる自宅は、介護保険被保険者証記載の住所地になり、子世帯の自宅を改修したい場合、そこに住所地が移されていることが条件です。一時的に身を寄せているのは給付対象外となります。新築の場合、建築後であれば対象となりますが建築中は利用できません。増改築の場合、細かな取り決めなどがあるため、市区町村で確認・相談をしてからの方が無難です。

 

早まったリフォームはNG

 

将来のためと、早まってリフォームをすることはお薦めしません。間取り変更のついでにバリアフリーにするのは問題ないとは思いますが、何の目的もない段差解消や手すり設置ならば、特に急がず住宅改修が使える状態になってからでも間に合います。リフォームの予定もないのに介護が必要になったときのために、などと早まる必要はありません。

 

なぜならば、廊下の右側に手すりを設置してみたが、脳梗塞の麻痺が残り使わなくなった。転倒防止にとバリアフリーにしたが、足腰が弱まるより先に認知症になり施設に入居した、など、介護が必要になる原因は、そのときでないとわからないのです。介護のリフォームは困ったときに実施でも遅くはありません。ケアマネージャーと相談しながら、介護のリフォームに実績のある業者に依頼しましょう。

 

住宅改修を利用する上での留意点

 

① ひとりにつき20万円(消費税込み)の支給、両親ともに介護保険認定があれば40万円

② 要介護状態が3段階以上高くなった場合、転居した場合は再度20万まで利用可能

3段階の基準は、初めて住宅改修を実施した時点で、初めて介護認定を受けた時点ではない。一度介護度が下がってそこから上がっても対象外

③ 原則として一旦全額を支払い、後から払い戻される償還払いとなる。※相談可能

④ 改修前の事前申請が必要、ケアマネージャーや地域包括支援センターに事前に相談

 

また、バリアフリー改修を行った場合など固定資産税減額制度の利用や、自治体ごとに独自サービスがある場合があります。事前にそれらも確認しておきましょう。

 

住宅改修の時期

 

わが家が、畳からフローリングにしたのは圧迫骨折をして、母が車いすになり自立歩行ができなくなってからです。歩行が可能なときは、転倒の方が怖かったので畳のままでした。転んでケガをしにくいのはフローリングよりも畳の硬さです。住宅改修は状況に合わせて、時期を判断してください。

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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渋澤 和世

プレジデント社

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