ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

介護費用の自己負担が軽減される制度がある

介護サービス費の利用者負担が高額になった場合(高額介護サービス費)

 

1か月の利用者負担額が高額になり一定の上限額を超えたときは、申請に基づき超えた分の金額が高額介護サービス費として支給されます。利用者負担額のうち、福祉用具購入費や住宅改修費、施設での食費・居住費や日常生活費、保険給付外のサービスについては対象となりません。

 

高額介護サービス費の支給対象となる可能性がある人は、市区町村から「介護保険高額介護(介護予防)サービス費等支給(変更)申請書」が送付されますので担当窓口に申請してください。申請は初回のみで、その後の支給対象分は自動的に指定された口座に振り込まれます。口座を変更するときは市区町村窓口へ届け出が必要です。

 

 

 

介護保険と医療保険の利用者負担が高額になった場合(高額医療・介護合算制度)

 

医療保険と介護保険のどちらも利用する世帯が、世帯自己負担額総額が著しく高額になる場合の負担を軽減させる制度です。対象となる利用者負担額は毎年8月~翌年の7月までの1年間に支払った医療保険・介護保険の自己負担額(一部負担金)の合計です。世帯が同じでも医療保険が異なる場合は合算ができないので注意しましょう。

 

支給対象となる人には、市区町村から申請を知らせる通知が毎年届きます。その通知が届いたら毎年申請する必要があります。高額医療合算介護サービス費(介護保険分)と高額介護合算療養費(医療保険分)は別々に振り込まれます。介護保険分の振り込みは、再度計算するため医療保険の振り込みより時間がかかることに注意してください。

 

 

 

申請主義なので、親が申請をしない限り受け取れない

 

高額介護サービス費も高額医療合算介護サービス費(介護保険分)、高額介護合算療養費(医療保険分)も役所の仕事は申請書を送るまでです。親が手続きをしなければ、単なる紙切れになってしまいます。高齢になると、一方的に送られてくる書類の必要性や重要性が理解できず、申請書に記入することも難しい場合があります。振込金は、数万単位の大きな額になることもありますので、帰省した際など、封書が届いていないかを気にかけてみてください。

 

その他の利用料の減免制度

 

高齢になるとインフルエンザで命をおとす危険もあることから予防接種はできるだけ実施したいのですが、その費用もかかります。多くの自治体では65歳以上の方を対象にインフルエンザ予防接種の免除制度を設けています。毎年、6~8月くらいに介護保険料納入通知書が届き、これが証明となり自己負担額が無料となるものです。この通知書は破棄せずに保管しておきましょう。

 

ただし、無料の対象となるのは保険料段階1~4の方となります。そして、利用者や生計維持者が災害等で財産に損害を受けたときや、収入が少なく生活が著しく困難な人に対しては、介護サービス利用料が減免される制度があります。

 

施設サービスを利用する場合、食費や居住費(部屋代)を負担しますが、この額は施設と利用者との契約によって定められます。収入が少ない人のサービス利用が困難にならないようにと軽減制度が設けられています(特定入所者介護サービス費)。これも利用するには市区町村への申請が必要です。介護保険は、ほぼ全てにおいて自己申告制です。自動的に手続きが進むものではないことを念頭に、情報収集をしながら、賢く介護の費用を節約してください。

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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渋澤 和世

プレジデント社

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