アパートや駐車場など相続した場合、所得税の申告を自身で行うケースは珍しくありません。そこで今回は賃貸不動産を相続した人が相続後の確定申告において、何に留意すべきか、相続税申告を数百件経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の山田浩史税理士が解説します。

「登録免許税等の必要経費算入」について

相続により不動産の名義変更を行う際には、登録免許税(固定資産税評価額×0.4%)がかかります。

 

また、司法書士に手続きを依頼すれば司法書士報酬が発生しますが、これら登録免許税・司法書士報酬は、不動産所得の計算上、必要経費に算入することができます。

 

なお、賃貸不動産に係る部分のみが必要経費に算入できますので、例えば対象物件が自宅兼貸家(賃貸併用住宅)である場合には、床面積等による合理的な按分計算が必要になります(次に紹介する固定資産税も同様)。

「 固定資産税の必要経費算入」について

固定資産税は、毎年1月1日の不動産所有者に対して課税される税金ですが、賃貸不動産に係る固定遺産税は不動産所得の計算上、必要経費に算入します。

 

固定資産税の金額が確定するのは「納税通知書が届いた時」(自治体により異なり4月~6月。東京23区は6月1日発送)になるため、被相続人の準確定申告と相続人の確定申告でそれぞれ必要経費に算入する金額は、相続開始日がいつかにより異なります。

 

つまり、被相続人の生前に納税通知書が届いていなければ、被相続人の準確定申告で必要経費に算入する金額は0円ということになります。

 

また、実際に必要経費に算入するにあたっては、次のいずれかを選択することができます。※選択は年ごとに可能

 

① 1年分の税額をその年の必要経費に算入

② 納期が到来した税額を納期の開始の日又は納付の日の属する年の必要経費に算入

 

上記の取扱いをまとめると以下のようになります。

【例】
納期(令和2年度・東京23区の場合)
第1期 令和2年6月1日~6月30日(納期限:6月30日)
第2期 令和2年9月1日~9月30日(納期限:9月30日)
第3期 令和2年12月1日~12月28日(納期限:12月28日)
第4期 令和3年2月1日~3月1日(納期限:3月1日)

※各期ごとに口座振替により支払っているものとする。
※各期ごとに口座振替により支払っているものとする。

① 相続開始日が令和2年10月1日の場合
※被相続人について納期到来及び納付済額は300,000円(第1、2期)

② 相続開始日が令和2年5月1日の場合
※相続開始日において納税通知書は届いていない

被相続人の「医療費に係る医療費控除」について

医療費控除はその年に実際に支払った医療費について認められるものであり、未払いとなっている医療費については対象外となります。

 

したがって、死亡日までの入院費用など死亡後に支払うこととなる被相続人の医療費は、被相続人の準確定申告において医療費控除の適用を受けることはできません。

 

ただし、医療費控除は、本人又は本人と生計を一にする配偶者や親族に係る医療費を支払った場合に、その支払った人の確定申告において適用できるものであるため、もしも被相続人の医療費を支払った相続人が被相続人と生計を一(同居しているなど)にしていた場合にはその相続人の確定申告において医療費控除を受けることができます。

 

なお、死亡後の被相続人に係る医療費は、相続税の計算で債務控除ができますが、相続税で債務控除をしたから所得税の医療費控除は受けられないというわけではなく、いずれも適用可能です。

「寡婦控除(ひとり親控除)」について

賃貸不動産を相続した相続人が被相続人の妻で、相続不動産の収入を含むその妻の合計所得金額(損失の繰越控除や譲渡所得の特別控除前の各種所得金額の合計額)が500万円以下である場合には、27万円(一定所得以下の同一生計の子がいる場合は35万円)の所得控除が認められます。

 

■まとめ

相続に関連した所得税の留意事項は他にもありますが、今回は主な部分を紹介いたしました。

 

今年も昨年同様コロナ禍の確定申告となりますが、税務署へ足を運びづらく、また、気軽に相談ができる税理士もいない方にとって今回紹介した内容が確定申告手続きの一助となれば幸いです。

 

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