※画像はイメージです/PIXTA

相続税の税務調査において、論点になるもののひとつが「名義財産」であり、線引きが曖昧なだけに判断は難しいとされます。そこで相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の山田浩史税理士が、過去の裁判例をもとに、どのように判断されるか解説していきます。

税務調査で最も疑われる「名義財産」

7月に入り税務署では新しい事務年度が始まりました。そして同時に1年の中で最も多く税務調査が行われる新たなシーズン(7月~12月)が幕を開けたことになります。

 

国税庁による最新のデータによれば、新型コロナウイルスの流行によって実地調査の件数は大幅に減少しましたが、大口案件等への優先調査や簡易な接触(文書や電話)の積極活用によって効果的・効率的に成果を上げていることが報告されており、申告漏れの把握に向けた努力はたゆませない姿勢がうかがえます。

 

足元では第7波といわれる新たな感染増加局面に入りましたので、今後の感染状況はもちろんのこと、今年もまた3度目となるコロナ禍の税務調査がどのように行われていくのかは気になるところです。

 

相続税の税務調査における中心論点ともいえるのが「名義財産」であり、名義財産か否かをどのように判断するかについて、裁判例から見えてくる勘所についてみていきます。

そもそも「名義財産」とは

相続税の対象となる財産は、「名義ではなく実質」で判断されることになります。そのため、たとえば名義が妻の預金でもお金の出所が亡夫である場合には、実質的な所有者である亡夫の「名義財産」として相続税の申告内容に含めなければならない可能性があります。

 

しかし、実務においては、そもそもお金の出所が不確かなケース、名義人の口座には名義人自身の財産もありその口座に故人と名義人の財産が混在しているケース、名義人はその財産を故人から生前にもらったものであると強く信じているケース等、単にお金の出所だけでは判断できないことが少なくありません。

 

また、税法や通達等において名義財産をどのように捉え、計算を行うべきかについての明文化されたルールがありませんので、納税者にとっては非常に無気味な財産であり相続税の申告手続きを難しくしている存在といえます。

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