分割で揉めぬよう、生前に遺言書の作成を行うことに
今回は、生前の対策として遺言を作成し、その後、実際に相続が発生した場合、遺言に基づいて分割をした際の税務のケーススタディを紹介いたします。
登場人物としては、被相続人(母)と相続人(長女・二女)と孫(長女の子/長男)になります。
年齢80代後半の母は、将来の万が一のことを考えて、相続対策として遺言書を作成することにしました。なによりも相続後にみんなで仲良く揉めないでほしいという思いを重要視していました。
遺言書の形式としては、自筆証書遺言という選択肢もありましたが、不備がなく万全な内容にできるように公正証書遺言で作成しました。
自宅については、長女家族が同居しており、将来的に家を代々守ってほしいという気持ちを込めて孫(長女の子)が取得という内容でした。
遺言書を作成した時点では、孫は独身であったため、所帯を持ち、きちんと家族を築いてくれるようにという願いも込めて遺言書の中に下記のような条件を設けておりました。
『孫が結婚した場合には、自宅の土地・家屋を遺贈する。』
遺言書を作成して2年後に相続が発生しました。
条件を設けたことで、相続税申告では思わぬハプニング
相続が発生したため、遺言内容に基づき遺産分割を行うことになりました。また、相続税の申告義務も生じるために申告の手続きも開始しました。
遺言を作成してから2年が経過しましたが、孫は依然として独身のままであったため、遺言の条件を満たさない形となり、自宅の土地を取得することができない事態になってしまいました。
相続税の申告においては、条件を満たさないと孫が取得できず、相続が発生してから10ヵ月の申告期限においても依然として要件を満たさないままであったため、孫が取得することができませんでした。
この場合、相続税の計算上においては、具体的にどのような取り扱いとなるのでしょうか。
自宅の土地・家屋については、取得者が確定しないため、分割が確定していない財産、つまり未分割財産として一旦は法定相続人が法定相続分で取得したものとして計算して申告を行わなくてはいけませんので、手続きも進めることができず、納税面や手続き面でも負担が生じることとなり、今現在においても分割は確定していません。