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相続が発生して、その配偶者や子どもが相続人に……よくある相続のケースですが、故人に子どもがいない場合、相続税が割高になるケースがあります。相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の松永卓朗税理士が解説します。

故人に子どもがいない…相続はどうなる?

近年、出生率の低下や晩婚化などにより子どものいない家庭は増えている傾向にあります。また、総務省統計局が公表した国勢調査に基づく将来の推計によると、2040年には生涯未婚率が男性で3割、女性で2割に達する見込みです。

 

いわゆる「相続」というと配偶者や子どもが相続人となり、亡くなった方の遺産を引き継いで相続税を納める、というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、子どもがいない場合、相続税の計算はどのように行うのでしょうか?

相続人になるのは誰か?

ご存じの方も多いと思いますが、相続には「順位」があり、①子ども(直系卑属)、②親(直系尊属)、③兄弟姉妹の順で該当者がいるかいないかを確認することとなります。

 

この順位は同じ相続の中で重複することはなく、第1順位の方がいれば第2、第3順位の方は相続人になりえません。つまり、子どもがいれば親や兄弟は相続人になりませんし、子どもがいなくても、親が存命であれば兄弟は相続人にはなりません。

 

なお、子どもが先に亡くなっていても、その方の子ども(被相続人から見て孫)やさらにその子どもがいれば「代襲相続人」という立場をその孫たちは獲得し、第1順位の相続となります。

 

ちなみに、配偶者は上記の順位とは関係なく相続人としての立場を有していますので、配偶者と子、配偶者と親、配偶者と兄弟姉妹のような組み合わせで相続人が確定されることとなります。

第3順位の相続で気を付けるポイントは?

さて、「お子様がいない」、「両親もすでに他界している」というケースでは配偶者と兄弟姉妹が相続人(第3順位の相続)となりますが、相続税という税額計算においてはどのようなことに気を付けるべきでしょうか?

 

① 配偶者の法定相続分

税額計算の際、配偶者の法定相続分が一般的に言われている財産の半分(1/2)とは異なり、3/4となります(第2順位の相続の場合には2/3)。以下でケースごとの各人の法定相続分を見てみましょう。

 

●ケース1 配偶者と子ども2人が相続人の場合の法定相続分

配偶者:1/2

子ども:各1/4

 

●ケース2 配偶者と被相続人の兄弟2人が相続人の場合の法定相続分

配偶者:3/4

兄弟姉妹:各1/8

 

このようにケース1とケース2では相続の目安となる割合が異なることがわかります。

 

なお、相続税の計算は、課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いた課税遺産総額を、法定相続人が法定相続分通りに取得したものと仮定して、各人の仮の取得額に対して税率を適用して計算します。

 

もし基礎控除を差し引いた後の課税遺産総額が2億円であった場合、具体的な相続税の総額の計算は下記のようになります。

 

●ケース1の場合

A 2億円×1/2×30%△700万円=2,300万円

B (2億円×1/4×20%△200万円)×2人=1,600万円

相続税の総額:A+B=3,900万円

 

●ケース2の場合

C 2億円×3/4×40%△1,700万円=4,300万円

D (2億円×1/8×15%△50万円)×2人=650万円

相続税の総額:C+D=4,950万円

 

以上の計算式から、相続人の人数は同じでも、家族構成によって相続税の総額にはかなりの差があることがわかります(ただし、配偶者は税額軽減の仕組みにより一定額までは相続税を支払う必要がありません)。

 

② 相続税額の加算

相続、または遺贈により財産を受け取る方が配偶者、もしくは子どもや親でない(一親等の血族でない)場合、その方は相続税を納める際、本税に対して2割の上乗せをして納付する必要があります。これは相続税法第18条「相続税額の加算」という規定により定められており、よく孫養子が2割加算の対象となる、と言われるのはこの規定によるものです。もちろん兄弟姉妹も一親等の血族ではないため2割加算の対象となります。

 

相続税の納付は、前項で計算した相続税の総額を、各相続人が各人の財産取得割合に応じて按分し、納付することになります。

 

上記のケース2の場合、兄弟姉妹が法定相続分(1/8×2名分)の財産取得をしたときは、約1,237万円が兄弟姉妹に割り振られ、さらにその2割(247万円)を加算して納付する必要があるのです。

 

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