借入をして不動産を購入すれば、相続税対策になる……よくみる謳い文句ですが、そこには注意しなければいけないポイントがあります。今回は、相続税申告を数百件経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の北川聡司税理士が、借入金を利用した相続税対策の基本と留意点について解説します。

「借入金だけ」では節税にならない

相続税対策を行おうとしている方から「借入をすると相続税が安くなりますよね?」と質問されることがあります。「借入をして不動産を購入すれば相続税が安くなりますよね?」という意味で言っているのであればそのとおりなのですが、なかには借入自体が相続税に有利になると思われている方もいるようです。

 

そこで借入金を利用した相続税対策について、その基本的な仕組みと留意点を確認していきましょう。

 

せっかくの対策が…(画像はイメージです/PIXTA)
せっかくの対策が…(画像はイメージです/PIXTA)

借入金で「相続税が安くなる」理由

相続税はプラスの財産からマイナスの財産を差し引いた純資産の金額を基に計算をします。仮に財産が2億円の預金のみでマイナスの財産(借入金)がない方であれば(当然ですが)純資産が2億円です。

 

 

この方が1億円の借入をした場合は次のとおりになります。この時点ではプラスの財産(預金)とマイナスの財産(借入金)が1億円ずつ増え、純資産は2億円で変わらないことが確認できます。

 

 

次に2億円で不動産(土地、建物それぞれ1億円で購入)を取得すると、2億の預金が土地8,000万円と建物6,000万円に変わりました。不動産の相続税評価額は現金の評価額(額面と同じ)よりも安くなるためです。

 

 

もしこれが賃貸物件であれば賃貸後は下記のようになります。相続税評価では、不動産を賃貸すると評価額が安くなるという評価上のルールがあるためです。

 

 

上記のように純資産が2億円⇒1億4,000万円⇒1億600万円と安くなるのは

 

① 預金が不動産に変わったこと
② 不動産を賃貸したこと

 

が理由であり、借入金自体に資産を圧縮する効果はありません。

 

土地については「小規模宅地等の特例」を利用して自宅は330m2まで80%減額、賃貸物件は200m2まで50%減額を受けられる場合がありますので、さらに純資産を圧縮できるケースも出てきます。

 

ここらからは借入金により不動産購入をする場合の留意点を3点、お伝えしていきます。

 

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※ 本記事の事例で用いた金額は説明を簡単にするための概算額ですので、厳密な金額ではありません。

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