ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

在宅介護より入居のほうが経済的負担が少ない場合も

エピソード

 

私は神奈川県川崎市在住ですが、近所でも朝晩限らずデイサービスなどの施設の車があちこちに走っていて、見かけない日はなくなりました。私がホームヘルパーの研修を受けたときは、車両も自宅前に停めるのはNGで、ご近所に気づかれないよう配慮しましょうと習ったものです。

 

今となっては、そのような意識ではなく、逆に知ってもらい地域で協力する考えに変わりました。この流れは介護保険を多くの人に知ってもらうことにつながってもいます。介護が必要になったら介護保険を使えば良いという認識が広まると良いと思います。介護保険を使う人が増えると予算を食い荒らすという現実に風当たりが強いのは事実です。

 

介護保険を利用している人は増えてはいますが、それでもまだ高齢者全体からすると一部分なのです。短期入所生活介護(ショートステイ)についての私の考えです。在宅介護の家庭では、是非利用していただきたいサービスです。家族が疲弊していても、かたくなに行きたくないという高齢者はいるものです。開口一番「無理やり連れてこられた」「旅行だと言われた」などと愚痴を言う人もいます。

 

訪問や宿泊をうまく活用しながら自宅で暮らすことをサポートする地域密着型サービスの必要性が高まっているという。(※写真はイメージです/PIXTA)
訪問や宿泊をうまく活用しながら自宅で暮らすことをサポートする地域密着型サービスの必要性が高まっているという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

ただ、ショートステイはずっと続くわけではないのです。家族が倒れるまでお世話しろという人はいるのでしょうか。なんで行きたくないのかは、ケアマネージャーに仲裁して聞いてもらうと良いでしょう。その理由がわかれば方法があるかもしれません。親も身内には甘えが出るもの、家族も涙を見せられたらやっぱりかわいそうと思うかもしれません。

 

ですが、いつかは、次のステップに進まないと余裕がなくなるのです。私の場合は、毎月第三水曜日は必ず母の宿泊を入れています。平日は仕事で帰宅後に介護と家事、土日は朝から介護と家事、こんな状態が続いてしまうときっと苦しくなります。ひと月に1日なのですが、母が泊まりの翌日の朝、母がいないだけで、ものすごくゆとりを感じます。ごく当たり前の生活が当たり前ではないからこそ、得られるゆとりです。

 

半面、全く問題がないわけでもありません。利用者からするとショートステイは人気のため、予約がなかなかとれませんし、施設からすると利用者が固定でないことから負担が多く、このサービスをやめる施設が増えているのも事実です。ショートステイはたまの利用なので、本人も施設もお互いにわかり合える状態になるまで時間がかかります。

 

不安があると認知症の人などは問題行動を起こしてしまうこともあるし、施設も様子がつかめないので対応に躊躇することもあります。そうこうしているうちに利用は終わってしまいます。それならば在宅にこだわってデイサービスとショートステイをやりくりするよりも、施設に入ってもらい、頻繁に面会に行き、たまに外出するという選択が良い場合もあるのです(特に老老介護の場合)。そして、ショートステイは何回も使うと高額になるので入居の方が金銭的にも負担が少なくなる場合もあります。

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

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渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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