鉱工業生産指数・前月比+4.2%、3ヵ月ぶり前月比上昇に。13業種上昇
経済産業省の生産指数・基調判断は「生産は持ち直している」で据え置き
1~3月期は生産予測指数等から見て、3四半期連続・前期比上昇見込み
1月分一致CI前月差上昇で、基調判断「上方への局面変化」に上方修正へ
(鉱工業生産)
●鉱工業生産指数・1月分速報値・前月比は+4.2%と、3ヵ月ぶりに上昇した。季節調整値の水準は97.7で、20年2月の99.5以来の水準に戻ったが、新型コロナウイルス感染拡大前の20年1月の99.8と比べてもまだ低い。1月は新型コロナウイルス感染再拡大を受け緊急事態宣言が再発出されたが、輸出の増加に続き、生産指数も上昇したことで、製造業部門への影響はそれほど大きくはなかったとみられる。前年同月比は▲5.3%で16ヵ月連続の低下となったが、9月分~1月分は5ヵ月連続マイナス幅が1ケタになった。
●1月分鉱工業生産指数では、全体15業種のうち、13業種が前月比上昇、2業種が前月比低下した。汎用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業、電気・情報通信機械工業等が上昇に寄与したが、輸送機械工業(除.自動車工業)、石油・石炭製品工業は低下に寄与した。
●経済産業省の基調判断は20年4月分・5月分で「総じてみれば、生産は急速に低下している」だったが、6月分で、「生産は下げ止まり、持ち直しの動きがみられる」に上方修正された。7月分で下げ止まりが外れ、「生産は持ち直しの動きがみられる」となった。8月分では、「生産は持ち直している」に上方修正された。その後、今回の21年1月分まで、「生産は持ち直している」で据え置きになっている。
●先月発表された製造工業予測指数1月分は前月比+8.9%上昇する見込みであった。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、1月分の前月比は先行き試算値最頻値で+4.4%になる見込みであった。90%の確率に収まる範囲は+2.7%~+6.1%の上昇の見込みであった。実際には、鉱工業生産指数の前月比が+4.2%の上昇になったわけだが、これは製造工業予測指数を下回ったが、試算値の範囲内にあり、最頻値に近い伸び率である。
●1月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比+3.2%と3ヵ月ぶりの上昇になった。前年同月比は▲5.1%で16ヵ月連続の低下となった。
●1月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲0.2%と2ヵ月ぶりの低下になった。前年同月比は▲10.5%と9ヵ月連続の低下となった。
●1月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比▲6.3%で、2ヵ月ぶりの低下になった。前年同月比は▲4.8%と4ヵ月連続の低下となった。
●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年10~12月期以降、45度線を上回って推移し、概ね「在庫積み上がり局面」が続いていた。19年10~12月期、出荷の前年同期比が▲6.5%、在庫が同+1.2%、20年1~3月期、出荷の前年同期比が▲5.2%、在庫が同+2.9%と、どちらも「在庫調整局面」であった。20年4~6月期は、出荷の前年同月比が▲19.9%、在庫が同▲3.4%と、出荷は大幅に減少したものの在庫調整がさらに進んだ。20年7~9月期は、出荷の前年同期比が▲13.5%、在庫が同▲5.7%と、引き続き「在庫調整局面」の状態にあったが、10~12月分では出荷の前年同月比が▲3.3%、在庫が同▲8.4%、そして21年1月分では出荷の前年同月比が▲5.1%、在庫が同▲10.5%と、20年4~6月期以降在庫が減少する中で、在庫調整がかなり進んで「意図せざる在庫減局面」になっている。
●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると2月分は前月比+2.1%の上昇、3月分は前月比▲6.1%の下降の見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、2月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲0.4%になる見込みである。90%の確率に収まる範囲は▲2.1%~+1.3%の上昇になっている。
●先行きの鉱工業生産指数、2月分を先行き試算値最頻値前月比(▲0.4%)、3月分を製造工業予測指数前月比(▲6.1%)で延長すると、1~3月期の前期比は+0.9%の上昇になる。また2月分・3月分を製造工業予測指数前月比(+2.1%、▲6.1%)で延長すると、1~3月期の前期比は+2.6%の上昇になる。1~3月期は3四半期連続の前期比上昇が期待される状況だ。
(1月分の景気動向指数・速報値予測)
●1月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+1.5程度の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の5系列が前月差プラスに、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差マイナスになると予測した。
●1月分の一致CIは前月差+2.0程度の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、輸出数量指数の5系列が前月差プラスに、有効求人倍率1系列が前月差横這いに、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の2系列が前月差マイナスになると予測した。
●一致CIを使った景気の基調判断は1月分では、12月分までの「下げ止まり」から「上方への局面変化」に上方修正されるとみられる。「上方への局面変化」は事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数ヵ月にあった可能性が高いことを示す。一致CI前月差が上昇、かつ一致CIの7ヵ月後方移動平均(前月差)の符号がプラスでプラス幅(1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月の累積いずれも)が振幅目安の+0.76以上になるとみられるからだ。
●1月分の先行DIは66.7%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の6系列がプラス符号に、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列がマイナス符号になると予測した。
●1月分の一致DIは75.0%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率、輸出数量指数の6系列がプラス符号になると、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業の2系列がマイナス符号になると予測した。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年1月分鉱工業生産指数・速報値について』を参照)。
(2021年2月26日)
宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
理事・チーフエコノミスト