住宅ローン月8万円が払えなかった飲食店経営45歳男性の年収額

住宅ローン破綻にいたった家庭の事情は複雑で、さまざまな要素が絡んでいるため、お金の問題だけを解決しようとしてもうまくいきません。本記事では、自宅を担保に700万円を借りたものの、業績が悪化し返済できなくなった飲食店経営者の事例を矢田倫基氏が解説します。

飲食店経営者「経営難で月8.5万円を返せない」

《押小路さん(仮名/おしこうじさん・45歳・男性)》

職業:飲食店経営・配送業配達員

年収:320万円

備考:飲食店を開業するため、父親名義の自宅を担保に700万円を借り入れたが、返済不能になり金融機関から競売申立の通知が届いた。

 

《物件とローンの詳細》

住宅のタイプ:一戸建て(築30年)

借入:700万円(金利8.1%)

毎月の返済額:8.5万円

備考:物件を購入したのは押小路さんの父親。その後、押小路さんが譲り受けて家族と居住していたが、名義は父親のまま。借金返済のため任意売却をすることとなったが、所有権を持つ父親が認知症のため法律行為ができない。

 

押小路さんが自宅を担保に700万円を借りたのは2012年のことでした。もともと飲食店で働いていた押小路さんは、そのお金を資金として念願だった自分のお店を開いたのです。

 

ところが経営は当初からうまくいかず、想定していたほどの収益をあげることができません。借金の返済が滞りがちになり、借入先の金融機関から自宅を競売にかける旨の連絡があったため、あわてて私の事務所を訪れたのは押小路さんの奥さんでした。

 

「うちの家は仕方がないにしても、お義母さんの家までなくなってしまわないか心配でなりません」

 

押小路さんは700万円を借りる際、母親が住むマンションも物上保証として担保に入れていたのです。

 

◆父親は認知症で法律行為ができない状態

事情を聞いて私がすすめたのは押小路さんが住む家の任意売却でした。競売になる前に売却し、できる限り債務を減らしてから金融機関と交渉すれば、母親の住まいまで競売の対象となることは避けられる可能性が高かったためです。

 

さらに押小路さんの奥さんに要望を聞くと、子どもの学校があるので、できれば今の家に住み続けたいといいます。競売になれば住み続けることは不可能です。競売を避けて今の家に住み続けるには、押小路さん一家と賃貸借契約を結んでくれるような投資家に家を買ってもらうしかありません。

 

ところがここで大きな問題が発覚しました。

父は重度の認知症…タイムリミットは4カ月しかない

押小路さん宅の持ち主である押小路さんのお父さんは重度の認知症を患っていたのです。意思能力がないため、不動産の売却に伴う契約などの法律行為ができません。そこで契約を代行できる成年後見人を立てることにしました。

 

◆開札まで4カ月、ぎりぎりのスケジュール

 

成年後見人を立てることができれば、押小路さんが住む家を任意売却することができますが、その計画にも大きなリスクがありました。

 

押小路さん宅の競売が申し立てられたのはその年の2月下旬。通常、競売の申し立てから最終的に落札者が決まる開札まで、約4カ月しかありません。2月の下旬に競売申立がなされたのなら、タイムリミットは6月の終わりごろということになります。それまでに成年後見人の手続きをすませ、金融機関と交渉し、買い手を見つけて契約を結ばなければタイムオーバーです。

 

特に成年後見人の選任には時間がかかり、それだけでも一般的には2~3カ月を要します。普通なら「無理」と判断するのが妥当なケースですが、私は「できる」と考え、引き受けることにしました。

 

そのためにはとにかく最短期間で成年後見人を立てねばなりません。通常、家庭裁判所に申し立てを行う際には候補者をあげます。押小路さんの親族と話し合った結果、母親と姉が候補者になってくれることが決まりました。大急ぎで必要書類をそろえて申し立てを行った結果、1週間という異例の早さで家庭裁判所の認定を得ることができました。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

私たちが仕事をしている京都では、京都家庭裁判所が成年後見人の選任を行う唯一の機関です。そのため常に混み合っており、選任に欠かせない書記官の面談も、申し込みから1~2週間待たされることがほとんどです。

 

そこで私は任意売却が決まると同時に書記官の予約をとり、面談までの間に必要書類をすべてそろえました。書類に不備があるとまた1週間待ちなので、この時点ですべての書類を不足なく用意するのが成年後見人を短時間で立てる秘訣です。

 

押小路さんのケースは私が予定したとおり、母親と姉が成年後見人に選任されましたが、なにか問題を指摘された場合には、司法書士である私の妻を推薦するつもりでした。

烏丸リアルマネジメント株式会社 代表取締役

1974年生まれ。大阪府出身。
大学を卒業後、大手ゼネコンで技術者として従事。その後、不動産コンサルティング会社に転向し、実績が認められ代表取締役に就任。そこでの経験を生かし、日本で初となる法律業務も扱う任意売却専門会社「烏丸リアルマネジメント」を設立し、現在に至る。金融機関や士業者からの信頼も厚く、任意売却の専門家として各地で講師も務める。多くのローン困窮者を救ってきた面談は「心のカウンセリング」と呼ばれ、関西圏だけでなく全国からも相談者が後を絶たない。
任意売却コンサルタント、宅地建物取引士、日本アドラー心理学会会員。

●烏丸リアルマネジメント株式会社 https://k-rm.com/

著者紹介

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著者 矢田 倫基   監修 矢田 明日香

幻冬舎メディアコンサルティング

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