65歳以上の高齢者の主な死因として、「悪性新生物(がん)」、「心疾患」、「老衰」に続く第4位にあげられるのが「脳血管疾患」です。生活習慣が原因の発症が多く、初期症状に気づくことができれば重症化を防ぐことが可能です。本連載では、医師である梶川博氏・森惟明氏が、脳血管疾患の半数以上を占め、65歳以上の発症率が上昇を続けている「脳梗塞」の種類や予防法、治療法を徹底解説します。

「どの部位が傷害されるか」によって、症状が異なる

◎脳の各部位と機能

 

脳は、どの部位が傷害されるかによって出現する神経症状が異なります。医師は問診、症状、神経学的診察によって梗塞の部位を推測し、画像検査などで確定診断をします。それぞれの機能についてまとめると次のようになります。

 

前頭葉:思考、意欲、情動、創造、言語、運動、性格、精神
頭頂葉:感覚(触覚、痛覚、温度覚、振動覚、位置覚)
側頭葉:言語、聴覚、視野、精神
後頭葉:視覚、視野
下垂体・視床下部:内分泌(ホルモン)
小脳:平衡感覚、運動円滑
脳幹:生命中枢、運動・感覚神経路
大脳辺縁系、間脳、視床、他:大脳皮質と脳幹の移行部で、脳梁、帯状回、間脳(視床、視床下部)、乳頭体、海馬などを含む。

 

脳を栄養する動脈は、左右の総頸動脈(common carotidartery:CCA)と左右の椎骨動脈(vertebral artery:VA)の合計4本です。

「脳梗塞」とはどのような病気なのか? 

左右の総頸動脈は頸部でそれぞれ内頸動脈(internal carotidartery:ICA)と外頸動脈(external carotid artery:ECA)に分かれます。椎骨動脈は頭蓋内で左右が合流し1本の脳底動脈(basilarartery:BA)となります。

 

内頸動脈系は前方循環(anterior circulation)と後方循環(posterior circulation)に分かれます。前方循環は、内頸動脈が中大脳動脈(middle cerebral artery:MCA)と前大脳動脈(anterior cerebral artery:ACA)に分かれ、大脳、間脳など広い範囲を栄養します。

 

後方循環は後大脳動脈(posterior cerebral artery:PCA)が主として後頭葉を栄養します。椎骨・脳底動脈は脳幹、小脳、間脳、後頭葉を栄養します。

 

脳梗塞では、どの血管に閉塞が生じたかによって、梗塞の部位や範囲が決まってきます。一側の内頸動脈や中大脳動脈の閉塞では対側の片麻痺、優位半球では運動・感覚失語、前大脳動脈では対側の下肢の片麻痺、後大脳動脈では対側の同名半盲、小脳ではめまいや平衡障害と対側あるいは同側の運動失調、脳幹では意識障害などです。

 

脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の可能性を強く疑うべき症状は下記です。症状を見逃さずに素早く救急車などで受診しましょう。

 

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脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法

脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法

梶川 博 森 惟明

幻冬舎メディアコンサルティング

高齢になるにつれて発症のリスクが高まる脳梗塞。 国民病ともされる脳梗塞の種類や予防法、治療法を知ることで、ならない工夫、なってからの対応を身に付けましょう。 「三大疾患に負けないシリーズ」第1弾!

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