2025年には、65歳以上の人口が国民全体の30%になることが見込まれています。それに加えて、日本社会では、後期高齢者の人口増加が最大の課題になっています。見送る家族が高齢者と共に最高の最期を迎えるためには、どのようなことをおこなうべきでしょうか。本記事では、1人暮らしの高齢者が亡くなったあと、どんなものが遺族を待ち受けているのか、事例とともに見ていきましょう。

本人も、家族も辛い。検視対象にならないために…

私自身も、一人暮らしで在宅死された患者さんのケースで、何度か警察の検視に立ち会ったことがありますが、できれば自分や家族が検視の対象になるのは避けたいと感じます。

 

家族の目に触れない場所に移動はしますが、衣類をすべてはがされたご遺体がブルーシートの上に無造作に置かれ、全身をくまなく確認される様子はただただ「痛々しい」の一言です。法律上やむを得ないとはいえ、亡くなった本人にもご家族にもつらい経験でしょう。

 

そのため自院の患者さんやご家族には、異変を知ったときは、まず救急隊や警察ではなく、主治医の私に連絡をしてほしいと常々お願いしています。

 

筆者の病院の患者さんのご家族のOさんも、一人暮らしをしていた父親が亡くなった際、検視を経験されています。かかりつけ医がいない健康な高齢者が、一人で亡くなると検視が避けられないことも多く、参考までにOさんの事例を紹介します。

 

事例:健康だった高齢者が亡くなり、検視に6時間

 

5年ほど前に、Oさんは同居していた義理の父親を在宅で看取りました。Oさんの実家は車で1時間ほどの距離ですが、4年前に母親が亡くなってからは父親が一人で生活をしていました。父親は80代になっても持病もなく健康で、Oさんも健康面では特に心配はしていなかったそうです。

 

しばらく仕事や家のことが忙しかったOさんが、「最近、父の顔を見ていないな」と思い立ち、次の週末に2ヵ月ぶりに実家を訪れると、実家の玄関は開いているのに声をかけても返事がありません。Oさんが室内に入ると、居間の角に父親があお向けで倒れていたそうです。

 

驚いたOさんが119番通報をすると、状況を聞いた消防署の判断ですぐに警察が到着。父親は持病もなく、かかりつけ医がいなかったために、そのまま検視が行われることになりました。

 

別室で監察医が検案を始めたのが、午後8時頃のこと。死後それほど時間が経っていないようでしたが、倒れている間に父親のご遺体には腰などに床ずれができており、それを指摘しながら虐待や暴力などの可能性がないかと、Oさんに対してもずっと事情聴取が続いたそうです。最終的には事件性はないという判断になり、すべてが終わったときには午前2時を回っていたといいます。

 

突然に父親を亡くし、悲しみと衝撃で呆然としているところに、6時間を超える検視と事情聴取が重なり、「以前に在宅で看取った義理の父とのあまりの違いに驚いたし、もうこんな経験は二度としたくない」とOさんは話してくれました。

 

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続・死ねない老人

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杉浦 敏之

幻冬舎メディアコンサルティング

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