終活ブームとはいえ、「死」を考えるのは簡単ではない
近年、日本では「終活」がブームのようになっています。
人生の終わりを見据え、医療・介護をどうするか、葬儀や墓をどうするか、身辺整理、相続、認知機能が衰えたときのための後見人制度など、さまざま話題がメディアで取り上げられています。終活に関する書籍もたくさんありますし、民間事業者や自治体が実施する市民講座なども増えています。
今は新型コロナウイルスによって集会型の講座は難しくなっていますが、むしろ「死」を想像しやすくなった社会心理を反映してか、大手出版社の週刊誌には「死ぬまでにやっておきたい手続き」といった記事がたびたび登場しています。
来るべき「死」に備えなければならないということは、多くの人が感じ始めている切実な問題なのでしょう。
しかしながら、実際に「人生の最終段階における医療・ケア」について身近な人と話し合ったことがある人は、まだごく少数にとどまっています。
厚生労働省が行った調査によると、一般国民で人生の最終段階における医療・ケアについてこれまでに「考えたことがある」と回答した人は59.3%と、半数以上に上っていました。家族や医療関係者などと実際に「詳しく話し合ったことがある」という人は、わずか2.7%でした。
「一応話し合っている」という人も36.8%で、二つを合わせても4割に届かない状況であり、これは4年前の調査と比べてもほとんど変わっていません。
そして、「話し合いをしたことがない」6割以上の人に、その理由を尋ねたところ、「話し合うきっかけがなかった」という人が半数以上の56.0%を占めています。次いで、「話し合う必要性を感じない」(27.4%)、「知識がないため、何を話し合っていいのか分からないから」(22.4%)といった理由が挙がっており、「話し合いたくない」という人は5.8%でした。話し合わなければいけないのは知っているが、いつ、どんなことをすればいいのか分からない。そんな国民の戸惑いがうかがえる結果となっています。
なかには、この厚生労働省の調査は病気のある人もない人も含めた幅広い年代の人が対象のため、「話し合っていない」人の割合が高いのかもしれない、と想像した人もいるかもしれません。
しかし、東京都健康長寿医療センターが外来患者の高齢者(つまり病気をもつ高齢者)約970人を対象に行った調査でも、終末期医療について家族や友人と「話し合ったことがある」という人は44%であり、さらにそれを文書などの記録に残している人は12%にとどまっていました。一方、「話し合ったことがない」人は48%、無回答が8%で、全体的な傾向は厚生労働省調査と大きな違いはないことが分かります。
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