日本では、「穏やかに死ぬ」のが難しい…
現代の日本で人が一人亡くなることは、本当に大変なことだなと感じた人も多いのではないでしょうか。もちろん一人の人の人生が終わり、家族や親しい人に永遠の別れを告げるというのは、大変な出来事に違いありません。
しかし私からみると、終末期医療・介護についての国民意識や社会のしくみが、現実に追いついていないために生じる混乱も少なくない気がします。
日本は世界に類をみないほど高齢化が進んだ国であり、すでに”多死社会”に突入しようとしています。
2020年の敬老の日には、65歳以上の高齢者が3617万人と過去最多となり、総人口に占める高齢者の比率は28.7%に上ることが報道されていました。高齢化率は調査対象の201の国・地域のなかで1位であり、2位のイタリア(23.3%)や3位のポルトガル(22.8%)を引き離しています。70歳以上の割合でも22.2%で、女性では25.1%と国民の4人に1人の割合になっています。
こうした超高齢者の国・日本で、「穏やかな最期」や在宅看取りを希望する人までも「何かあれば119番」あるいは「警察へ通報」という対応を続けていると、この国の社会システムが崩壊してしまいかねません。
・高齢者本人は、意に反して救急車で運ばれ、苦痛を伴う蘇生をされる。
・救急隊員や救急医は、疑問や葛藤を抱えながら搬送や治療をこなす。
・治療の努力もむなしく高齢者が亡くなれば、家族には「これでよかったのか」という無念さや後悔が残る。
・終末期でも一人で在宅死をすると検視などにより、家族は二重の苦しみを味わう。
これが、現代日本でみられる「死」の実情です。関わる人たちの誰も幸せにならないという悲しい状況が、日々各地で繰り返されているのです。
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