2025年には、65歳以上の人口が国民全体の30%になることが見込まれており、後期高齢者の増加が、今後の日本の福祉、医療における最大の課題になっています。国から「在宅医療」が推進されるなか、高齢者本人とその家族が安心して「最期」を迎えるためには、どうすればよいのでしょうか。今回は、家族で「終活」に取り組むきっかけになる取り組みについて解説します。

「いのちの尊さ」伝えるためのユニークな取り組み

千葉県松戸市は「いのちの尊さ」を伝えるために、ユニークな取り組みをしています。

 

2018年の日本在宅医学会でも報告されたのが、同市の「まちっこプロジェクト」という活動です。これは松戸市医師会の在宅医らが、「いのちの尊さ」や「認知症」といったテーマについて地域の小中学校に出向いて出前講座を行うものです。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

「いのちの尊さ」の講義では、国民的アニメ「サザエさん」一家の30年後が登場します。一家の大黒柱の波平さんは84歳になってすい臓がんを発症し、余命が長くないという設定です。

 

妻のフネさんは80代、長女のサザエは54歳になり、長男・カツオは41歳、小学校のクラスメートの花沢さんと結婚し、花沢不動産を継いで仕事にも脂がのっているときです。次女・ワカメも39歳の社会人になっています。

 

自分も高齢になったフネさんは波平さんの主治医と相談し「最期までおうちで暮らしたい」という波平さんの思いを叶えてあげたいと考え、子ども3人と家族会議を開くという設定になっています。そして、それぞれの考えを話し合うグループワークを行う流れになっています。

 

秀逸なのは、講座で小中学生にこうした家族の老いや命の終わりを想像してもらうだけではなく、家に帰って授業の内容を二人以上の家族に話し、感想をレポートにして提出してもらうという点です。つまり、子どもたちから親や祖父母に終末期医療というテーマを切り出し、一緒に考えてもらうという構造になっています。

 

普段は忙しい親や高齢になった祖父母も、子ども、孫から学校の宿題として話をされれば考えざるを得ませんから、この「子どもたちから周りの大人へ(Child to Commu-nity)」という作戦を考えた人は、なかなか優れた戦略家だなと感心しました。

 

そして「いのち」という難しいテーマを子どもや市民に考えてもらうと同時に、在宅医療や地域で支える在宅ケアについての啓発を図ることも、このプロジェクトの目的の一つとなっています。

 

こうした自治体レベルの取り組みは地域によって差があります。同プロジェクトも出前講座の課題がそのまま実際の医療・介護に反映されるわけではないでしょうが、家族で「いのち」や「死」を話し合う練習にはなりそうです。

 

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続・死ねない老人

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杉浦 敏之

幻冬舎メディアコンサルティング

どんな人でも懸命に生きたその先に、必ず死を迎える。 大切な人生の終わりを“つらい最期"にしないために何ができるのか――。 「死」を取り巻く日本の今を取り上げつつ、 自分の最期をどのように考え、誰にどう意思表示…

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