2025年には、65歳以上の人口が国民全体の30%になることが見込まれています。それに加えて、日本社会では、後期高齢者の人口増加が最大の課題になっています。見送る家族が高齢者と共に最高の最期を迎えるためにはどうすればよいのでしょうか。本記事では、本人が拒否しても蘇生を中止できない、救急現場が抱える問題点や、ICUの現実について見ていきます。

「高齢者で溢れる病院」における、ICUの現実

救急車の搬送先の医療機関でも、関係者の苦悩は大きくなっています。

 

私の友人で、ちょうど地域の基幹病院の副院長をしている医師がいます。病院は、現在新型コロナウイルスの重症者への対応を迫られているところが多いと思いますが、コロナ騒動の少し前に会ったときには「この20年余りでICU(集中治療室)の風景も大きく様変わりした」と語っていました。

 

彼が救急医療に携わるようになったのは1998年頃ですが、当時のICUに運ばれてくる人には高齢者もいる反面、交通事故でけがをした人や誤って大やけどを負った人、自殺を図った人など、若い世代の患者も多かったといいます。そういう若い人たちを治療し、社会復帰をさせるのが救急医の使命だったわけです。

 

実際に退院して元気になった若者があとで病院を訪ねてきて、救急医に御礼を伝えたりするシーンもあり、それが常に高い緊張を強いられるICUで働く医師たちのやりがいやモチベーションを支えていた面があります。

 

しかし最近のICUの病床は80代、90代という超高齢者が大半だということです。自宅や高齢者施設から救急車で運ばれてきた高齢者が、ほとんどの病床を埋めているのです。

 

例えば90代のお年寄りが肺炎で運ばれてきて、この人を治療して助けたとしても、社会復帰ができるわけではありません。必死に治療をして命をつないでも、高齢者では入院中に夜間せん妄を起こして夜中に騒ぎ出す人もいますし、認知症が進んでしまうこともあります。

 

高齢者施設から救急搬送されてきた人を治療し、1ヵ月して運よく人工呼吸器が外れたときには「よかったね」と言えますが、その場合ですら、入院治療中は施設を退去した扱いになっていることが多く、元の施設に戻れないケースがよくあります。結局、命をとりとめた高齢者は、別の施設や療養型病院のベッドの空きを探して転々とすることになります。

 

こうした状況を話しながら、その医師は「若い救急医のモチベーションも保ちにくいし、高齢世代ばかりを苦労して治療することにどれだけの社会的意義があるのかと考えてしまうこともある」と漏らしていました。  

 

 

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