医学部入試「女性差別」の真犯人…合格率の是正で「解決」か?

医学部の不正入試問題が発覚したのは2018年のこと。その後2019年入試が終わっても、文科省は指摘があった10大学の状況を報告したのみで、2020年12月に至るまで他大学の情報を公表しなかった。文科省が情報開示に消極的だった当時、筆者らは独自に調査し、データ分析を行った。入試における性差別が疑われる大学はどこか。問題発覚以前と以降ではどのような変化があったのか。合格比率が是正されればこの問題は解決と言えるのか。独自調査データを紹介するとともに、性差別の実態に迫る。

「大学病院経営のコスト削減のため…」大学側の思惑

2019年の入試では、女性合格者の比率が前年より2.3%増えて37.0%になりました。前出のハフィントンポストは『東京医大不正入試で2019年の女子合格者が急増?⇒この噂デマでした(全国調査の結果)』と表していますが、これは適切ではありません。

 

女子合格者が2.3%も増加したことは特筆すべき現象です。なぜなら、入学者に占める女性の割合は2000年代半ばまでは、右肩上がりで増加していましたが、その後は33%前後で横ばいだったからです。

 

私は小泉政権(2001~6年)による「聖域なき構造改革」に医学部が対応した結果と考えています(※2)。診療報酬が切り下げられ、国立大学の運営費交付金も減額されたため、「安価な労働力」を期待して、男性を優先的に合格させるようになったのでしょう。

 

2018年12月29日に公表された東京医科大学の第三者委員会(委員長・那須弘平弁護士)の報告でも、女子や多浪生への差別は2006年度から始まり、伊東洋・元学長が指示したと認定しています。その理由として、附属病院の経営のため、結婚や出産で離職する可能性がある女子学生の合格者数を抑えたいという思惑があったと結論しました。

 

つまり、女性差別の本当の理由は、大学病院経営のコスト削減のためです。経営陣は自ら身を切ることはせず、女性受験生を犠牲にしてきたのですが、大学病院というビジネスモデルが時代に合わなくなっている以上、弥縫策(びほうさく)では対応できません。

男子受験生を一生働ける「安上がりな人材」として歓迎

大学病院が競争力を失った診療科を抱えていられるのは、若手医師を安いカネでこき使えるからです。若手医師の待遇は劣悪です。東京医科大学の場合、後期研修医の給料は月額20万円。これに夜勤手当、超過勤務手当がつきますが、この給料で、新宿近辺で生活しようと思えば、親から仕送りをもらうか、バイトに明け暮れるしかありません。

 

しかも、この契約は3年間で満了し、1年更新です。妊娠した場合、雇用が契約されるか否かは、東京医科大学に委ねられます。この結果、東京医科大学の人件費率は40%に抑え込まれ、利益率は5.3%と高レベルです(2017年度)。これは東京医科大学に限った話ではないでしょう。

 

大学病院経営の視点から考えれば、女性より男性が安上がりです。産休はとらず、一生働き続けるからです。入学試験の点数が多少低かろうが、男性を採用します。憲法14条「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」など、まったく気にしません。

 

彼らの眼中にあるのは、自らが所属する大学病院の医局あるいは学内で出世することだけです。彼らの主張が正しいのは、学内に限定した場合だけです。残念なことですが、これが医学部の実態です。

 

※1 『東京医大不正入試で2019年の女子合格者が急増?⇒この噂デマでした(全国調査の結果)』(ハフィントンポスト、2019.5.10)

 

※2 小泉改革が医療界に与えた影響は拙著『日本の医療崩壊を招いた構造と再生への提言』(蕗書房、2012年刊行)で解説しました。

 

 

上 昌広

内科医/医療ガバナンス研究所理事長

 

 

 

 

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内科医
医療ガバナンス研究所理事長 

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。虎の門病院、国立がんセンター中央病院で臨床研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究する。著書に『ヤバい医学部 なぜ最強学部であり続けるのか』(日本評論社)、『病院は東京から破綻する』(朝日新聞出版)など。

著者紹介

連載東大医学部卒の内科医が語る「医学部」の実態

ヤバい医学部 なぜ最強学部であり続けるのか

ヤバい医学部 なぜ最強学部であり続けるのか

上 昌広

日本評論社

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