医学部受験「地域枠」の酷い実態…もはや「現代の人身売買」

医学部特有の入試試験「地域枠」。奨学金・就学資金の貸与があることから、一般家庭から医師を目指す受験生にとっては極めてありがたい制度に思われる。ところが筆者はこの地域枠を推奨せず、むしろ「現代の人身売買である」と厳しく指摘する。一体なぜなのか? 地域枠の本質、地域枠で入学した医学生に起きたこと…医学界の実態を明かす。※本連載は、上昌広氏の著書『ヤバい医学部』(日本評論社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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6年間の授業料を超越する「奨学金2000万円」の対価

「地域枠入試」とは、医師不足や診療科の偏在が問題となっている地域で、将来、地元の医療を支えてくれる受験生のために行われる医学部特有の入学試験です。

 

厚労省が導入したもので、医師不足の解消、地元占有率の向上、奨学金・修学資金の貸与によって、一般家庭からの進学者の増加などがメリットとして挙げられています。

 

厚労省は地域枠入試の拡大を進めており、2018年の医療法改正では、都道府県の権限を強化し、医学部入学定員に地元出身者枠を設けるよう大学に要請できるようにしました。

 

私は、地域枠入試を勧めません。それは医学生や父兄の無知につけ込んだ「現代の人身売買」だからです。

 

厚労省は美辞麗句を並べますが、地域枠入試の本質は「借金とお礼奉公」です。地域枠入試の合格者には自治体から奨学金が給付されます。実は、これは貸与で、返還義務があります。9年間、行政が指示する医療機関で働けば、返還義務がなくなりますが、そうでなければ、通常10%以上の利息がかかります。国公立大学の場合、6年間の授業料が350万円程度なのに、2,000万円近い借金を背負わされます。

 

最近、厚労省は借金を返済し、地元以外の病院で働こうとする医師を雇用しないように、病院に通知を出しました。私は、こんな制度をとっている先進国を知りません。

入学後、絶望…絶対「離脱」させない地域枠の恐ろしさ

私が編集長を務めるメールマガジン「MRIC」には、地域枠で医学部に入学した学生の母親からの悲痛な叫びが届きました(※)

 

無医村で働く医師の話に感動し、地域医療に憧れを持つようになった息子さんは、地域枠の募集要項を取り寄せました。そこにはわずかの記載でしたが、数年間の縛りがあり、毎月の奨学金も受給できて、県内勤務の意思がなくなれば返還することも可能と書かれていたそうです。

 

ところが、入学すると実態はまったく違いました。「優先的に地域医療を勉強させてもらえるところではなく、誰もが行きたがらない地域に強制的に行かせるところ」だと気づいたそうです。

 

また、地域枠の多くは推薦入試入学しており、「地域枠=頭が悪い」、または「コネ」と見做されていることを知りました。

 

募集要項の記載の通り奨学金を返還することを申し出ましたが、途端に先生方からの「医師の世界は狭いから君の将来はないよ」と言われ、返還に応じてはもらえませんでした。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

募集要項の奨学金を返還すれば指定病院に勤務しないことができるという記載については、「それはあなたの解釈の間違いであり、返還は認めない、絶対にいかなる理由があっても9年間誰ひとり辞めさせない」と断言されました。さらに「お金を返還しても勤務義務だけは残る」とまで言われました。

 

退学して受験し直すことを考えましたが、予備校にも相談したら、「医学部を退学して医学部を再受験する場合、たとえ合格ラインに達しても不合格になることが必至」と言われました。履歴書や面接で整合性がないと判断されるそうです。

医療レベルの低下必至…地域枠による医師獲得の末路

大学教授たちが、ここまで強硬なのは、厚労省の方針に従っているからです。厚労省は、地域枠出身者が指定外の病院に勤務していたことが判明した場合、病院の補助金を減額する方針を明かしています。江戸の敵を長崎で討つと公言しているのと同じで、「本来、やってはいけないこと(厚労省関係者)」です。

 

厚労省は自らのやり方に無理があり、地域枠入学者には離脱する権利があることは知っていますので、医道審議会などの資料には「地域枠離脱者の道義的責任は残る」という記載にしています。国が「道義」を強制するのは近代国家ではありません。

 

医学部を志望する高校生は多いのに、大学の入学者を地元優先にすれば、実力のない学生が入学してきます。

 

卒業後は地元の医師不足地域に強制的に派遣されます。若者は異郷を経験して成長するのは、古今東西共通です。地元で生まれ、地元の大学を卒業し、地元に縛り付けられれば、成長のチャンスを失ないます。

 

医師不足の日本で病院は医師確保を巡って、激しく競争しています。経営経験のない退職した大学教授を院長に迎える病院が多いのは、医局から医師を派遣して欲しいためです。「病院経営は医師確保にかかっている」というのが、医療界の常識です。

 

医師不足地域とは、医師獲得合戦で負けている地域です。僻地でどうしようもないというところもありますが、多くは経営者に問題があります。地域枠の学生を、卒後、このような病院で勤務させつづければ、実力はつきません。長期的には、医療レベルは低下するでしょう。

 

 田中優(仮名)「国立大学医学部一般入試地域枠の学生の理不尽な現状――道義的責任がある」「MRIC」 Vol. 135, 2019.8.5

 

 

上 昌広

内科医/医療ガバナンス研究所理事長

 

 

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内科医
医療ガバナンス研究所理事長 

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。虎の門病院、国立がんセンター中央病院で臨床研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究する。著書に『ヤバい医学部 なぜ最強学部であり続けるのか』(日本評論社)、『病院は東京から破綻する』(朝日新聞出版)など。

著者紹介

連載東大医学部卒の内科医が語る「医学部」の実態

ヤバい医学部 なぜ最強学部であり続けるのか

ヤバい医学部 なぜ最強学部であり続けるのか

上 昌広

日本評論社

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