本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

実質GDP成長率は前期比年率+12.7%と、2四半期連続2ケタプラス成長

 

実質、個人消費2期連続増加、設備投資3期ぶりの増加、輸出2期連続増加

 

21年1~3月期実質GDPは個人消費、設備投資など減少でマイナス成長か

 

 

●20年10~12月期第1次速報値では、実質GDP成長率は前期比+3.0%、前期比年率+12.7%。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で前期比年率▲29.3%と大幅なマイナスになった4~6月期の反動から、+22.7%と2ケタの増加率になった7~9月期に続いてプラスの2ケタの伸び率になった。また、20年10~12月期名目GDP成長率・第1次速報値は前期比+2.5%、前期比年率+10.5%となった。季節調整値は552.1兆円で直近のボトムだった4~6月期の510.6兆円から2四半期連続で戻したものの、直近のピークだった19年7~9月期の564.2兆円から12.1兆円低い水準になった。

 

●実質個人消費は、前期比+2.2%と2四半期連続の増加になった。実質家計最終消費支出の前期比は+2.2%の増加、実質国内家計最終消費支出の前期比は+2.2%の増加である。その内訳をみると、まちまちで、耐久財の前期比は+9.2%と2四半期連続の増加になった。半耐久財の前期比は▲2.0%で、こちらは5四半期連続の減少となった。非耐久財の前期比は▲0.5%と2四半期ぶりの減少になった。サービスの前期比は+3.0%と2四半期連続の増加となった。実質雇用者報酬は前期比+0.8%と2四半期連続の増加になった。

 

●実質住宅投資は前期比+0.1%と2四半期ぶりの増加になった。

 

●前期まで新型コロナウイルスで先行きが不透明な中、企業が慎重になっていた設備投資は、10~12月期で前期比+4.5%と3四半期ぶりの増加になった。名目の前期比(季節調整済み)は+4.1%と3四半期ぶりの増加である。法人企業統計との比較で参考になる、名目の前年同期比は▲3.7%と5四半期連続の減少になったが、7~9月期の▲11.1%の2ケタ減少からは減少率が縮小した。

 

●供給サイドのデータに基づいて算出した、10~12月期の名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は+8.4%で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は+1.7%であると公表された。法人企業統計が出た時に前年同期比が▲6.3%程度より高いかどうか比較することで、10~12月期実質GDP成長率・第2次速報値での設備投資予測の参考となる数字だ。

 

●民間在庫変動の実質・前期比寄与度は▲0.4%だった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫は前期比寄与度0.0%、流通品在庫は前期比寄与度▲0.3%となった。また、仮置き値の原材料在庫前期比寄与度は▲0.1%、同じく仮置き値の仕掛品在庫は同0.0%だった。

 

●実質政府最終消費支出は前期比+2.0%の増加だった。また、実質公共投資は前期比+1.3%の増加になった。公的在庫変動の実質・前期比寄与度は▲0.0%であった。公的需要の前期比寄与度は+0.5%だった。

 

●10~12月期外需(純輸出)の前期比寄与度は+1.0%と2四半期連続プラス寄与になった。新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ世界経済が持ち直し基調にあるため、実質輸出は前期比+11.1%と2四半期連続の増加になった。財は前期比+12.8%と2四半期連続の増加になったが、サービスは前期比+3.6%と4四半期ぶりの増加になったが1ケタ台前半の伸び率にとどまった。訪日外客数がほとんどないのでインバウンド需要は盛り返していない。実質輸入の前期比は+4.1%と2四半期ぶりの増加になった。財に関しては前期比+6.3%と2四半期ぶりの増加となった。サービスは前期比▲3.4%と2四半期連続の減少になった。

 

●10~12月期のGDPデフレーターの前年同期比は+0.2%のプラスの伸び率になったが、7~9月期の+1.2%から鈍化した。国内需要デフレーターの前年同期比は▲0.6%と2四半期ぶりにマイナスの伸び率になった。一方、10~12月期の季節調整済み前期比をみると、GDPデフレーターは▲0.5%、国内需要デフレーターは▲0.4%になった。

 

●20年の実質GDP成長率は新型コロナウイルスの影響で落ち込み▲4.8%となった。リーマンショックの翌年の09年(▲5.7%)以来11年ぶりのマイナス成長になった。

 

●「令和3年度の経済見通し」の20年度実質GDP成長率実績見込み・前年度比▲5.2%を達成するには、20年度残り1四半期で前期比年率▲11.8%(前期比▲3.10%)が必要である。19年度から20年度へのゲタは▲1.3%である。なお、20年度残り1四半期が前期比0.0%だと20年度実質GDP成長率・前年度比は▲4.5%のマイナス成長になる。20年度残り1四半期が前期比▲2.0%だと20年度実質GDP成長率・前年度比は▲5.0%のマイナス成長になる。

 

 

 

●また、3月9日公表予定の10~12月期第2次速報値では、3月2日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資や在庫投資が改定される。

 

●法人企業統計では在庫投資の伸び率は名目の前年同期比で発表される。GDPの第1次速報値では在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は▲0.2%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、4項目で一番大きなマイナス寄与は製品在庫、次に大きなマイナス寄与は流通品在庫、そして原材料在庫が続くということだ。仕掛品在庫だけがプラス寄与ということだ。

 

●先行き、新型コロナウイルス感染急拡大防止のため緊急事態宣言が再度発出された1~3月期の成長率が注目される。ESPフォーキャスト調査2月調査の1~3月期実質GDP成長率見通しは36人の平均で前期比年率▲5.47%、高位8人の平均は▲2.36%、低位8人の平均は▲8.63%とエコノミストにより幅はあるものの、20年4~6月期の大幅マイナス成長以来のマイナス成長になることが予測されている。

 

●消費財総供給指数の10~12月期から1~3月期へのゲタは前期比▲1.8%、資本財(除く輸送機械)総供給指数の10~12月期から1~3月期へのゲタは前期比▲7.0%と民需の2大項目のゲタはともにマイナスだ。緊急事態宣言が再発令された1~3月期では個人消費、設備投資が前期比減少に転じそうだ。また、日銀、実質輸出の10~12月期から1~3月期へのゲタは前期比+0.5%、実質輸入の10~12月期から1~3月期へのゲタは前期比+0.3%である。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年10~12月期実質GDP(第1次速報値)について』を参照)。

 

(2021年2月15日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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