いま、士業は過渡期を迎えようとしています。「AIに士業の仕事が奪われる」――。そんな言葉も目にするようになりました。しかし、士業のすべてなくなるわけではなく、人間にしかできない仕事がまだまだあります。AIやITなどの技術革新が続くなか、士業の仕事に付加価値をつけ、どのように仕事を獲得していけばいいのか税理士で公認会計士として活躍する著者が明らかにします。本連載は藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋し、再編集したものです。

士業は経営参謀に向いている4つの理由

士業に備わっている経営参謀としての適性

 

私は、士業は経営参謀にうってつけの存在だと考えています。その理由として、士業には次の4つの強みがあるからです。

 

士業の強み①「法律や会計など経営に不可欠な分野の専門的な知識や経験がある」
士業の強み②「多くの会社の経営課題に触れる機会がある」
士業の強み③「経営者と接点を持ちやすい」
士業の強み④「資格という社会的信用がある」

 

経営参謀としてクライアントの経営課題の解決に向けた支援ができれば、AI時代を生き抜くための大きな付加価値となるという。(※写真はイメージです/PIXTA)
経営参謀としてクライアントの経営課題の解決に向けた支援ができれば、AI時代を生き抜くための大きな付加価値となるという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

経営者は業績拡大、新規事業の立ち上げといった「攻め」の部分は得意でも、法律や会計、税務、労務といった「守り」の部分には疎いと感じることが多々あります。この「守り」の部分は、士業の専門分野であるため(士業の強み①)、士業が経営参謀として関わることで、「守り」の部分が補完でき、経営の安定化につながります。

 

また、多くの経営者は自社の経営しか知らないため、経営課題に直面すると「他社はどうやって解決しているのか」について強い関心を持ちます。そのため、他社の解決事例の紹介ができることは、経営参謀としての重要な価値となります。この点、士業は多くの会社の経営課題に触れる機会があるため(士業の強み②)、守秘義務を守ることを前提として、その部分で価値を発揮できます。

 

それから、経営参謀として顧客を獲得していくためには、多くの経営者と接点を持つことが必要です。これは一般のビジネスマンには簡単ではありませんが、士業には経営者と接点を持つ機会が比較的多くあります(士業の強み③)。さらに、資格でその分野の専門能力が担保され、経営者からの信用が得られやすいのも利点です(士業の強み④)。

 

これらの強みに鑑みると、士業は経営参謀にうってつけの存在だといえるでしょう。

 

経営課題に関する相談は、インターネットで簡単に答えが出る相談とは違います。従業員や顧客との関係、財務状況、業界の動向、競合他社の動き、経営者の価値観、関連する法令など、複数の要素を勘案する必要があるため、Think やHumanity の要素が強く求められ、自動化が極めて難しい仕事です。そのため、経営参謀としてクライアントの経営課題の解決に向けた支援ができれば、AI時代を生き抜くための大きな付加価値となるでしょう。

 

参謀あるいは経営参謀として付加価値を発揮していくための事業戦略をどう展開していくかについて、業務を「自動化されやすい業務」と「自動化されにくい業務」に分け、お伝えしていきます。

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経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

藤田 耕司

日本能率協会マネジメントセンター

AIの利用が広がるにつれ、多くの士業が「定型的で単純な手続き業務はAIに取って代わられかねない」と危機感を強めています。 起業して新事業を始めたり、いち早くAIを取り入れたりするなど、業務の見直しに取り組む動きも出始…

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