灘高→東大理Ⅲ→東大医学部卒。それは、日本の偏差値トップの子どもだけが許された、誰もがうらやむ超・エリートコースである。しかし、東大医学部卒の医師が、名医や素晴らしい研究者となり、成功した人生を歩むとは限らないのも事実。自らが灘高、東大医学部卒業した精神科医の和田秀樹氏と、医療問題を抉り続ける気鋭の医療ジャーナリストの鳥集徹氏が「東大医学部」について語る。本連載は和田秀樹・鳥集徹著『東大医学部』(ブックマン社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

勉強法変えて、東大理Ⅲを目指すことに

和田 それで、高2の頃に医学部を、その後勉強法を変えて成績が上がってから、東大理Ⅲを目指すことにしたのです。自主映画を撮るなら東京の方が有利だし、映画の現場の使い走りもできると考えたのです。

 

また、私の生まれた家は普通のサラリーマン家庭でしたので、貧しくはなかったけれど、そんなに裕福ではないことも子ども心にわかっていました。弟もいましたから、勉強ができなかった当初から、私が私立の医学部に行くと親に経済的に迷惑がかかるから、国立を狙うしかないと思っていました。このあたりのことは、私の自伝的小説『灘校物語』*に詳しく書きました。小説といっても、ほとんどが現実の出来事です。

 

そしてなんとか、高2から進路を決めて現役で東大理Ⅲに合格することができたのです。

 

『灘校物語』
和田秀樹著、2019年、株式会社サイゾー刊。
本書著者、和田秀樹の自伝的小説。成績上位で天下の灘校に入るも、深夜ラジオ放送にドはまりして成績は急降下。ヒモで足を結ばれて3階の校舎からぶら下げられたり、ゴミ箱に閉じ込められたりなどの過激なイジメを受ける。にもかかわらず、毎年落選確実候補と罵られながら生徒会役員に立候補、未来の政治家を目指して大人顔負けの熾烈な選挙戦を繰り広げる…。天才・秀才・奇人ひしめく灘校で自分を見失いかけた主人公のヒデキが、映画への情熱と仲間を見つけ、とうとう編み出した受験のテクニックによって、東大理Ⅲ合格を掴むまでの抱腹絶倒の物語。

 

鳥集 灘というエリート校のなかでは遅い進路選択だったかもしれませんね。それでも理Ⅲに現役合格できたというのは、よほどの集中力があったのではないでしょうか? 

 

和田 いえ、私は、集中力はまったくと言っていいほどありません。多動的なところがあるので。ただある時期に、数学の問題を考えるのをやめ、暗記数学で勉強したところ、数学の点数が劇的に上がったのです。高1のときの数学の先生が、「数学は暗記です」という教え方をしてくれたのがきっかけです。その先生は、予備校の講師も兼任していました。先生が出すテストは、数学演習の宿題に出されたのとまったく同じものが、数値を変えただけで出題されました。

 

それで、暗記数学を高1の終わりから始め、高2の6月に受けた高3生対象の全国模試では、数学で満点を取ることができました。そこでいきなり、東大理Ⅰで〈A判定〉が出たのです。もともと得意だった化学と英語でも9割以上取れたので、灘の高2のなかで18位と、それまでに経験したことがない順位になりました。

 

このときに初めて、「このままの勉強法を続ければ、高2を終えた時点で東大に合格できる。ということは、高3の終わりには理Ⅲも狙えるのではないか?」と思えるようになったのです。

 

鳥集 それは、和田さんが、もともと暗記力が相当よかったからではないですか。

 

和田 暗記力というのは二つあります。目の前にあるものをそのまま目に焼きつけて覚える力と、ストーリーとして記憶させる力です。

 

私は、人名や地名などのブッキッシュなもの(書物上の非実際的なもの)の丸暗記は苦手でした。でも、映画のストーリーのような、「筋があるものの暗記」は得意だったのです。観た映画に関しては、そのストーリーや台詞をすっと覚える力はありました。

 

暗記数学というのは、後者です。つまりは論理、解法パターンを暗記すればいいのです。その経験から、必ずどの科目にも受験のテクニックがあるはずだと考えるようになりました。だから後に、『数学は暗記だ!』*という本まで書いたんです。

 

『数学は暗記だ!』
和田秀樹著、ブックマン社刊(初版は1991年)。
数学受験に必要なのはセンスか、才能か。いや、暗記法だ。「解けるまで考える」のではなく、入試問題を解くために必要な解法パターンを一気に覚える。それが暗記数学なのだ。解法暗記から試行力養成まで、暗記数学の「正しいやり方」を全公開。苦手な数学を入試日までに頼もしい〝ポイント・ゲッター〟に育てるためのノウハウ本。

 

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