ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

食事・排せつ・入浴など日常生活動作の確認

患者やその家族の相談にのる
医療ソーシャルワーカー(MSW)

 

ある程度の規模がある病院には医療相談室、地域医療連携室などの部門があり、医療ソーシャルワーカー(MSW)が在籍しています。相談援助の国家資格である社会福祉士や精神保健福祉士などが、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・作業療法士・管理栄養士など、他の専門職と連携をとり、患者の状態と、患者や家族の希望に沿った退院後の生活について、提案や相談にのっています。

 

課題をどう解消するかを一緒に考えてくれるので、例えば、早期の退院が決まったのだが退院後の生活環境を整える時間が足りない、と感じたときなど、MSWに伝えてください。遠慮せず「困っている」ことを声に上げて伝えることが大切です。

 

退院後の生活準備は
入院中に進めておく

 

入院を境に要介護状態になってしまったら、家族はとても不安になります。早期退院の要請があったら退院後の選択に大いに悩みます。施設入居を検討する場合、今後の生活の場になるかもしれないことを安易に決められません。そんなとき、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病院へ一旦転院をして在宅復帰や施設を検討する時間を稼ぐことも一案です。退院の先延ばしは良いことではありませんが、きちんと検討する期間が必要とも思います。MSWは豊富な情報と連携先を知っています。相談も無料で頼もしい存在です。

 

退院後の自宅での生活をイメージする

 

入院直後は、治療方針が固まらないこともあります。入院時に医師から入院診療計画書に治って説明を受けますが、治療が進むにつれ当初の予定から変わることもあります。心配なことや疑問点があったら頃合いを見て治療法や入院期間を主治医や看護師に確認してください。抗生物質の点滴は、数週間ごとに種類が替わります。私は点滴剤の薬剤名と製薬会社をメモして効能と副作用を調べました。どうしてこの時期に替えたのかも医師や看護師に質問していました。

 

そして、早いうちから定期的に食事・排せつ・入浴など日常生活動作に関する親の状態も確認してください。その状態により自宅のトイレに手すりをつけた方が良いと判断するならば、介護保険の福祉用具貸与か住宅改修を申請する方法もあります。介護保険が未申請ならすぐに申請しようという判断にもつながるのです。

 

介護保険施設との橋渡しも

 

特別養護老人ホームや介護老人保健施設を検討したい場合もMSWは橋渡し役になってくれます。これらの介護施設には生活相談員という専門職がいて、病院のMSWと連携し入居に向けた調整をしてくれます。待機も多いのですぐに希望通りになるとも限りませんが、アドバイスをもらえるので、何もしないよりは前進します。抗がん剤や胃ろう、24時間の中心静脈栄養など医療依存が高まり在宅復帰が困難となるケースでは、医療療養型病院の紹介をしてもらえます。

 

退院後、在宅を希望する場合は、担当のケアマネージャーに相談するのが一番ですが、訪問診療を支援する退院調整看護師を配置している病院もあります。この場合もMSWに橋渡しを依頼することができます。

 

家族の相談にも対応している

 

患者である親本人だけでなく、家族の疑問や相談も受け付けてくれます。例えば、病院設備に関すること、職員の対応、入院費の支払いなどです。入院費は月1回の定期会計時での支払いとなりますが思いのほか高額になる可能性もあります。市区町村窓口で「限度額適用認定証」の交付を申請し、これを医療機関に提示すると窓口での支払いを安くすることができます。

 

「限度額適用認定証」があれば、病院の会計時支払金額を抑えられます。ない場合は病院に支払う金額は一時的に高額ではあるけれども、高額療養費の申請をしていれば、後日、払い戻しを受けることができます。どちらでも結果的に支払う金額は同じ額となります。

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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