医学部専門予備校・TMPS医学館代表取締役の長澤潔志氏が、自らの経験談をもとに、医学部受験のゆがんだ実態について解説していきます。

推薦入試枠が増え続ける理由はカネ!

推薦枠の裏側

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

ところで、2016年度入試から、東京大学が推薦入試をスタートさせました。他大学でも推薦入試の枠は増える一方です。

 

こうした動きに、私は大きな危機感を募らせています。推薦入試枠や地域枠が増えても、実のところ一般の学生にとっては、あってないようなものだなとつくづく感じてしまうのです。その理由は、以下の話で納得いただけるでしょう。

 

大学医学部の経営者たちと呑んでいた時のことです。もちろんオフレコの場です。

 

ある医学部の副理事長との会話の中で、私が、

 

「推薦枠であれば、かなりレベルが低くても入学できるのですね」

 

と自身の体験から質問したところ、副理事長の返答はこうでした。

 

「いやー、長澤先生ね、それでいいのです。我々としては入学してもらって、たくさん寄付をいただければ。どうせレベルの低い学生はついていけなくなり、留年して退学してしまうのですから」

 

私は返す言葉を失ってしまいました。

 

近年、大学・学部を問わず、推薦入試は驚くほど増えました。その大きな理由は、ペーパーテストばかりで学生たちを選ぶことが、真の意味での選抜として如何なものか、と感じている国民が多いからでしょう。もちろんペーパーテストにも限界はあります。しかし、そうした脱ペーパーテストの方向性が、イコール推薦入試を増やすことであってはならないのです。なぜなら、前述の副理事長の言葉が証明するとおり、推薦での入学者が増加するということは、裏口入学者も増えることにほかならないからです。

 

あるいは、このようなこともありました。

 

私の予備校における実話です。父親が医者をしている、ある男子生徒の論文添削を終えた時のことでした。次回は別のテーマで論文を書いてきなさいと指示を出したところ、その学生が私の指示を拒否したのです。

 

「先生、僕はこのテーマで書きたいのです」

 

「いや、いろいろなテーマで書かなければ勉強にならないよ」

 

「それがダメなんです」

 

「えっ、何で?」

 

ここで、学生はしばらく沈黙したあと、

 

「実は今年の推薦入試はこのテーマなのです」

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本連載は、『医学部受験の闇とカネ』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。なお本記事で紹介している内容は、著者の体験をもとに執筆しております。万一、本連載の記載内容により不測の事故等が生じた場合、著者、出版社はその責を負いかねますことをご了承ください。

医学部受験の闇とカネ

医学部受験の闇とカネ

長澤 潔志

幻冬舎メディアコンサルティング

講師歴30年の医学部専門予備校代表の長澤潔志氏が、実体験をもとに、合格率を偽って、「授業料を挙げる予備校」、「コネとカネがなければ合格できない推薦枠を設ける大学」、「指導力不足で受験生を浪人に導く高校」など、さま…

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