推薦入試枠が増え続ける理由はカネ!
推薦枠の裏側
ところで、2016年度入試から、東京大学が推薦入試をスタートさせました。他大学でも推薦入試の枠は増える一方です。
こうした動きに、私は大きな危機感を募らせています。推薦入試枠や地域枠が増えても、実のところ一般の学生にとっては、あってないようなものだなとつくづく感じてしまうのです。その理由は、以下の話で納得いただけるでしょう。
大学医学部の経営者たちと呑んでいた時のことです。もちろんオフレコの場です。
ある医学部の副理事長との会話の中で、私が、
「推薦枠であれば、かなりレベルが低くても入学できるのですね」
と自身の体験から質問したところ、副理事長の返答はこうでした。
「いやー、長澤先生ね、それでいいのです。我々としては入学してもらって、たくさん寄付をいただければ。どうせレベルの低い学生はついていけなくなり、留年して退学してしまうのですから」
私は返す言葉を失ってしまいました。
近年、大学・学部を問わず、推薦入試は驚くほど増えました。その大きな理由は、ペーパーテストばかりで学生たちを選ぶことが、真の意味での選抜として如何なものか、と感じている国民が多いからでしょう。もちろんペーパーテストにも限界はあります。しかし、そうした脱ペーパーテストの方向性が、イコール推薦入試を増やすことであってはならないのです。なぜなら、前述の副理事長の言葉が証明するとおり、推薦での入学者が増加するということは、裏口入学者も増えることにほかならないからです。
あるいは、このようなこともありました。
私の予備校における実話です。父親が医者をしている、ある男子生徒の論文添削を終えた時のことでした。次回は別のテーマで論文を書いてきなさいと指示を出したところ、その学生が私の指示を拒否したのです。
「先生、僕はこのテーマで書きたいのです」
「いや、いろいろなテーマで書かなければ勉強にならないよ」
「それがダメなんです」
「えっ、何で?」
ここで、学生はしばらく沈黙したあと、
「実は今年の推薦入試はこのテーマなのです」