以前、世間を騒然とさせた「老後2000万円問題」。資産形成への関心が高まるなか、新型コロナの世界的流行を機に企業の倒産や失業、収入減が相次いだことから、給与以外の収入源の重要性を身に染みて実感したはずです。ここでは会社員の副業として人気の「不動産投資」について、失敗しないためのポイントを解説します。

毎月定額の家賃収入が見込める「一括借り上げ」契約

初めて不動産投資をする際は、必ず管理会社と一括借り上げ契約を結ぶべきか否かで迷うはずです。

 

一括借り上げとサブリースを混同している人がいますが、前者は管理会社がオーナーから空室の有無にかかわらず一定期間借り上げる方法で、後者はその物件を又貸し(転借)することです。

 

一括借り上げの契約を締結すれば、たとえ空室が出たとしても毎月定額の家賃収入が見込めるので、オーナーとしては願ったり叶ったりの契約のはずです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

手数料ありきでも「自腹でローン返済生活」よりマシ

とはいえ、この契約は無料でも半永久的でもありません。一括借り上げの手数料の相場は、家賃の10%から20%前後といったところでしょう。これにはクレーム対応など一般的な管理手数料も含まれます。

 

また、契約は2年更新とするケースが多いようです。契約更新は、そのまま以前の条件を継続する場合もあれば、家賃の値下げやリフォームなどを条件とするケースもあります。

 

一括借り上げ契約という言葉は、2018年の「かぼちゃの馬車事件」などで有名になったので、いいイメージを持たない人もいるでしょう。実際に「管理会社が突然倒産して家賃が入らなくなるかも」「更新条件としてかなりの額の家賃値下げを要求されたらどうしよう」といった不安をよく聞きます。

 

しかし、そのような被害を回避する方法はあります。それに一括借り上げ契約を結べば何より安心を得られます。想像してみてください。もし、家賃7~8万円の部屋が空室になったら、ほぼ同額のローン返済を自腹でしなければなりません。それが2ヵ月・3ヵ月と続いたら私ならば精神的に耐えられないでしょう。仕事も手に付かずに一日何回も管理会社へ電話をし、「入居はまだですか!?」と泣きつくはずです。

 

そんな想いをするくらいなら、10%の手数料を支払ったほうが精神衛生上どんなにいいでしょう。問題は前述のような管理会社の倒産や契約更新時の家賃値下げですが、その回避方法は次で説明します。

全物件の平均入居率「90%未満」の管理会社はNG

新築ワンルームマンションを供給する不動産投資会社の多くは、一括借り上げを行う管理業務も兼務しています。そのような会社は、物件の営業時に「一括借り上げ契約もいかがですか」と勧めてくるはずです。このときに契約内容を見極めることができるか否かで、不動産投資の成否が決まります。

 

見極める際の第一ポイントは、まずその会社が管理する全物件の平均入居率でしょう。入居率は、担当者に聞けば教えてくれるはずです。即答できないのは論外です。

 

目安としては90%。これ以下で一括借り上げ契約を行っているのであれば、その会社の収支は赤字の可能性が大です。そしてその埋め合わせは物件販売の利益のはずです。要するに「一括借り上げが赤字」→「物件販売で埋め合わせ」→「一括借り上げが赤字」という自転車操業を続けているのです。こういった会社は倒産の可能性も高くなるので、契約は締結しないほうがいいでしょう。

契約期間2年未満は「不当な家賃値下げ」に遭うリスク

次に契約更新時の家賃値下げに関してですが、これはある程度は仕方ありません。賃貸物件は築年数が経てば経つほど、家賃を下げないと入居者は確保できないからです。また管理会社としては、家賃は低いほど入居者募集に困らなくなるので、常に相場より低くしたい、というのが本音です。

 

しかしなかには、最初から短期間で値下げすることを想定している一括借り上げ契約もあります。

 

そのような契約を見抜く方法の一つが、契約期間の確認です。一般的な契約期間は2年です。それよりも短いなら理由を聞いてみましょう。納得できる回答ができなければNGです。

 

一方で会社によっては5年、10年といった長期のものもあります。その間に家賃が下がることはありません。2年よりもベターな選択となります。

 

ただし、この期間が絵に描いた餅では意味がありません。実際にこの期間が過ぎて契約を更新した事例があるのか、あるなら家賃はどうなったのか聞いてみましょう。その会社のサービス開始からの期間が短いなどで事例がなければ、会社自体の信用度を確認するなどの作業が必要でしょう。

 

そして、実際に契約を更新した際に値下げをした事例があるのかを聞いてみるのも、非常に有効な手段です。

 

繰り返しますが、経年による家賃値下げは仕方ありません。問題はその頻度と下げ幅です。管理会社が何も努力をしないで、「ただ家賃を下げれば空室にならない」というスタンスでは困ります。そこで過去に値下げした例はあるのか、あれば何年目にいくら下げたのか、どうしてその金額になったのか、を確認します。この回答が、そのままあなたが聞くことになる契約更新時の値下げ交渉の内容になります。納得できれば契約をする価値があるでしょう。

 

 

本橋 亮

宅地建物取引士

 

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