生命保険料がどんどん膨らむ、意外すぎる理由
消防士の方々は、ほかの職業の人よりも貯蓄が少ないように感じます。その理由の一つが生命保険の保険料を無駄に多く払っている、ということです。なぜそうなるのか私なりに分析した結果が以下になります。
【お付き合い契約が多い】
各消防署には生命保険会社が指定業者として登録されており、普段から積極的に営業活動をしています。そのうえで、年に1回程度、署員全員を集めた説明会が開催され、「新入署員であっても生命保険に加入していて当たり前」という雰囲気があります。
さらに消防士の多くは縦にも横にも人脈が広いことに加え、安定した収入もあることから、生命保険の営業担当者にとっては優先順位の高いターゲットとなります。
そのため、営業担当者は一度消防士の顧客をつかむと「同僚の方々を紹介してください」と必死にお願いします。なかには若い女性の担当者が一生懸命頼むので、断り切れないという話もあります。
その結果、何人もの先輩から「とにかく話を聞いてやってくれ」と担当者を紹介されるのです。もちろん、先輩からの頼みなのでむげにはできません。
そのほか、転職して生命保険の営業担当者となった後輩、同期、先輩などから加入を頼まれることもあります。
複数加入の結果、保険料「毎月10万円」のケースも
【複数の保険に加入する】
いくらお付き合いといっても、複数の営業担当者から同じ保障の保険に入るわけにはいきません。そのことはそれぞれの担当者も分かっています。
そこで担当者は、その時々のライフステージで必要と思える保険を勧めてきます。例えば次のようなケースが考えられます。
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▼結婚前
死亡したあとにお金を必要とする配偶者がいないので、入院のみを対象とする医療保険に加入します(毎月の保険料:数千円・以下同)。
▼結婚後
死亡保障付きの生命保険を奥さんの分も含めて2人分加入します。ただし、配偶者の生活費はある程度遺族年金で賄えるので、お葬式代として200万円前後の保障にします(数千円×2)。
▼出産後
子どもがいる状態で死亡したら、遺族年金だけでは足りません。特に教育費が不足するはずです。そこで世帯主である自身自身の保険金を2500万円程度に増額します(数万円)。
さらにがん保険(数千円×2)、学資保険(1万5000円前後)、介護保障保険(数千円)、傷害保険(千円前後)などを勧められることも多いでしょう。
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こうした複数の保障の積み重ねで、毎月10万円近く支払っている消防士にお会いしたことがあります。生命保険の保険料の平均支払額は、毎月3万2000円程度ですから大幅に多いと言えるでしょう(「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」〔生命保険文化センター〕)。
補償内容は同じだが…契約更新で保険料が大幅アップ
【同じ保障内容を維持するために保険料が上がる】
若い時分は誰でもお金がないものです。しかし、社会人になったとたんに生命保険の営業担当者はやってきます。しかも新入署員のときに先輩から担当者を紹介されたら断ることはなかなかできないでしょう。
そこで「できるだけ保険料を安くしたい」と担当者に相談するケースが多いようです。するとこういった提案をされます。
死亡保障の付く生命保険は大きく分けて3種類あります。加入すれば保障が一生続く「終身保険」、65歳までなど保障期間が決まっている「定期保険」、保障期間が決まっているものの、満期が来たらいくらかお金が戻って来る「養老保険」です。
そのうち「定期保険」は掛け捨てとなる代わりに毎月の保険料が安くなります。そのため、お金がない若いときは、このタイプの保険を勧められることが多いようです。
しかしこの保険には注意しなくてはならない落とし穴があります。それは満期後に契約を更新しようとすると、保険料が大幅に上がってしまうことです。
例えば、30歳のときに15年契約で毎月の支払いが5000円の保険に加入したとすると、45歳の更新時は1万2000円、60歳の更新時は3万5000円といったように同じ保障内容なのに保険料が上がっていきます。
一方で「終身保険」であれば最初から最後まで保険料は変わりません。営業担当者から「若いときに保険に入ったほうが毎月の支払いが安くなりますよ」という説明を受けた人は多いと思いますが、その理由はこういうことです。
以上のような無駄の多い生命保険料は、営業担当者と話し合って不必要な保障を解約するなどすれば減らすことができます。しかし、そのことを知らずに多額の保険料を支払い続けて生活に窮する消防士の方は少なくないようです。
さらに生命保険会社によっては、職業としての危険度から消防士に対して死亡保険金や入院日額に制限をかけているところがあります。これは同じ年齢・年収の一般サラリーマンと消防士がいた場合、前者は1億円の生命保険に加入できるのに、後者は7000万円が上限といったことです。
たとえ多額の保険料を支払っていても、それに見合った保障が受けられれば安心という見返りを得ることができるでしょう。ところがそれが実現できない保険会社も少なくないのです。