Appleのスティーブ・ジョブズが、文字のアートであるカリグラフィーをプロダクトに活かしていたことは有名だ。マーク・ザッカーバーグがCEOをつとめるFacebook本社オフィスはウォールアートで埋め尽くされている。こうしたシリコンバレーのイノベーターたちがアートをたしなんでいたことから、アートとビジネスの関係性はますます注目されているが、実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っているという。ビジネスマンは現代アートとどう向き合っていけばいいのかを明らかにする。本連載は練馬区美術館の館長・秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

アートはグローバルコミュニケーションツール

グローバルなコミュニケーションツール

 

中田のファンは、もちろん世界にいて、いわゆるセレブの人たちもいます。スポーツと同時に文化や芸術も愛している人たちです。その人たちとの付き合いは、文化を介したもので、単なるビジネスネットワークとは異なった広がりを持っています。

 

そこでは同じような価値観を共有し、クリエイティブな感性を高め合っている、いわば文化的なコミュニティのような場なのです。そこで培った人脈やコミュニケーションがときに大きなビジネスにつながっていくのでしょう。

 

中田の例は、彼だけが特別ではなく、同じように個人で様々な国際的なネットワークを持って活躍している人たちが存在していて、文化とビジネスをつなぎ、活性化させているということです。

 

そういう人たちは、大声で日本のダメなところや問題点を他人に語りません。

 

工芸はかつての勢いを失い、失速する筆頭に挙げられる美術のひとつですが、皆がダメというわけではなく、うまくいっている作家は、国際的に活躍していて、いい仕事をしています。輪島に雲龍庵という現代漆芸のグループがいますが、ロンドンのビクトリア・アンド・アルバート美術館において、生存作家ではじめて個展を開催したというほどのグループで、主な仕事先は海外です。

 

私自身がキュレーションした展覧会において、新しく台頭してきた現代アート化する工芸を紹介した『工芸未来派』展を2012年に金沢21世紀美術館で開催したのですが、その出品作家として雲龍庵と知り合いました。これは、借用の際わかったことですが、彼らの作品のほとんどが海外のコレクターのものだったのです。

 

このときの借用先のコレクターのひとりとして知り合い、後々もお付き合いすることになったのが、オーストラリア在住の大富豪ガンデル夫妻です。

 

ガンデル夫妻は、不動産から美術館、レストラン経営、ワイン製造まで幅広くビジネスを展開する経営者でいくつもの会社を所有していました。文化的なことが大好きで、美術にも造詣が深く、メルボルンの国立美術館のジャパンギャラリーの1室は、夫妻の寄付によるものです。さらにそこでの展示品である漆芸から伊万里まで数百点にものぼる作品も、寄贈によるものでした。彼らは、輪島に作品を見に来るときはいつもプラベートジェットで飛んでくるのですが、私も何度か同乗させてもらい、オーストラリアへの訪問時には、多くの有力者をご紹介いただきました。

 

こういう人たちは、やはりいいものが好きで、本格的なものがいいわけです。現代アートの面白いものや世界で話題になっているものに興味を持ち、実際に体験し、そこで新しい人間関係のつながりも持つのです。あなたもいつ世界のセレブたちと会う機会が回ってくるかわかりませんから、そのためにもグローバルなコミュニケーションツールであるアートの知識くらいは、覚えておいたほうがよいでしょう。

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