AIの利用が広がるにつれ、多くの士業が「定型的で単純な手続き業務はAIに取って代わられかねない」と危機感を強めている。ITやAIの技術革新の波は今後もとどまることはない。とはいえ、打つ手はあると公認会計士・税理士の藤田耕司氏は語る。本連載は藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋し、再編集したものです。

AIや機械による自動化が難しい仕事の領域

「自動化されやすい業務」と「自動化されにくい業務」

 

AIやITの進歩により今後自動化されていく可能性の高い業務も数多くありますが、一方で、技術が進歩したとしても自動化される可能性が低い業務もあります。

 

ここでは行政書士、社会保険労務士、弁理士、中小企業診断士のそれぞれの仕事について、自動化の可能性や影響を考えていきます。

 

AIやITが進歩しても自動化が難しい業務とは何か。(※写真はイメージです/PIXTA)
AIやITが進歩しても自動化が難しい業務とは何か。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

行政書士業務の自動化の可能性

 

行政書士の主な業務は、建設業や宅建業などの許認可の手続き、就労ビザなどの入管業務、株式会社や一般社団法人などの法人設立業務、相続手続きや後見などの市民法務業務などです。

 

このうち許認可業務については、都道府県などの行政の管轄により書式や添付書類が異なる場合もあるため自動化は進んでいませんが、政府の「デジタル・ガバメント実行計画」によって書式の統一などが行われれば、書類作成業務については自動化される可能性も否定できません。

 

一方で、許認可業務では、代理人として行政と交渉することや、複数の利害関係者との調整が必要な場合もあります。こういった交渉や利害関係者の調整はThink、Humanity、Bodyの要素が求められるため、自動化は難しいと思われます。

 

また、民泊やドローンに関するビジネスなど、新たなビジネスモデルが生まれた際に何らかの許認可リスクがあるのかどうかの相談を受ける場合があります。技術の急激な進歩に伴うさまざまなビジネスモデルの誕生により、こうした相談業務は今後さらに増えると予想されます。こうした業務にはビジネスモデルをよく把握したうえで判断するThinkの要素が求められ、AIや機械による自動化は当面は難しいでしょう。

 

このほか、行政書士は争訟性がない案件に関する相続業務や後見業務も可能です。これらの業務は、司法書士の項で述べたようにHumanityの要素が強く求められ、クライアントに寄り添うことが求められる業務です。他の業務にもいえますが、「この人に相談したい」と思われるクライアントとの信頼関係の構築は、AIや機械にはまねできない、人間ならではの付加価値が発揮できる領域といえます。

 

社会保険労務士業務の自動化の可能性

 

社会保険労務士の主な仕事は、社会保険・労働保険に関する諸手続きや給与計算、就業規則の作成、人事労務相談が挙げられます。

 

このうち給与計算に関しては、計算のパターンがある程度定型化されており、勤怠データを取り込むと自動計算ができるようになりつつあります。

 

社会保険と労働保険に関する諸手続きに関しては、申請で必要な書類の中には作成が複雑なものもあり、すぐにすべてを自動化することは難しいでしょう。また、申請時の社会保険労務士としての捺印は、法的資格としてのBodyの要素が必要になるため、AIや機械には不可能です。

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経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

藤田 耕司

日本能率協会マネジメントセンター

AIの利用が広がるにつれ、多くの士業が「定型的で単純な手続き業務はAIに取って代わられかねない」と危機感を強めています。 起業して新事業を始めたり、いち早くAIを取り入れたりするなど、業務の見直しに取り組む動きも出始…

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