他の士業と比べて仕事が奪われない中小企業診断士
就業規則の作成は、ビジネスモデルの内容、組織の現状、今後の方針、将来のビジョン、経営者の組織作りや人事に対する考え方などを把握し、最適な雇用関係を実現させるためにその内容を作成していきます。シンプルな内容のものであれば、所定のフォーマットを組み合わせる形で自動化できる可能性もありますが、複雑な内容のものはThink、Humanityの要素が必要となるため、当面、自動化は難しいでしょう。
人事労務相談に関しては、相談の内容が多岐に渡り、経営者、従業員の気持ちや想いとさまざまな状況を勘案した判断や提案が必要となり、Think、Humanityの要素が不可欠です。また、相談相手の悩みや苦しみに寄り添い共感する、解決策の実行にあたって勇気づける、その進捗を管理する、経営者と従業員の間に入り双方の話を聴き調整するなど、Humanityの要素が強く求められる局面が多々あります。こういった分野は、より自動化が難しいでしょう。
弁理士業務の自動化の可能性
弁理士の主な仕事は、特許権、実用新案権、商標権、意匠権といった知的財産権の出願登録手続きと、これらの取得のためのコンサルティングや先行出願の調査などがあります。
このうち、出願に関する書類作成に関しては、AIを活用して効率的に書類作成を行うサービスが存在しており、今後の技術の進歩によって自動化される可能性は高まるでしょう。また、先行出願の調査に関しても、対象となる技術と類似したものをAIが探索してピックアップすることで、業務は大幅に効率化されると思われます。
一方で、権利の出願にあたっては、「クライアントがどういった範囲の権利を取得したいのか」「権利を取得する目的は何か」という点をヒアリングして、依頼者の取得したい権利が取得目的に照らして妥当なものかを判断することが重要です。
場合によっては、出願範囲の変更や分割、それに伴う権利の活用方法の提案を行うなど、コンサルティングの側面が強くなるケースも少なくありません。
こうした業務はThinkの要素が問われます。相手のビジネスモデルや想いを深く汲み取って理解する点、クライアントの納得を得られるように提案する点などで高いコミュニケーション能力が求められ、Humanityの要素も重要となります。こういった業務については、現時点で自動化することは難しいでしょう。
中小企業診断士業務の自動化の可能性
中小企業診断士の業務は経営企画・戦略立案、販売・マーケティング、財務、人事・労務管理など、経営に関する幅広い業務が挙げられます。他の士業に比べるとコンサルティング業務の割合が多く、正に経営参謀として企業の経営に関わる業務が多いといえます。
単純な手続き業務に関しては他の士業と同様自動化される可能性は高いといえますが、Think、Humanityの要素が求められるコンサルティング業務に関しては自動化される可能性は低いでしょう。そのため、他の士業と比べてAIによって代替される仕事の割合は少ないと思われます。
藤田耕司
一般社団法人日本経営心理士協会代表理事
FSGマネジメント株式会社代表取締役
FSG税理士事務所代表
公認会計士、税理士、心理カウンセラー
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