託児所が使えず…困難化する「医療スタッフの確保」
二度目の緊急事態宣言が11都府県に発令されました。全国で感染者が増加している現在、同宣言の対象ではない福島県も例外ではありません。
筆者が働くのはいわき市で展開する『ときわグループ』です。我々のグループ施設や、周辺の医療施設や介護施設においても、患者さんや利用者さん、スタッフの陽性が増えています。
現場で陽性者が発生し、他のスタッフも濃厚接触者と判定されて、人手が次々と減っていく…という流れは、コロナ対策の最前線ともいえる医療現場でも同じです。濃厚接触者となったスタッフはその後に陰性と確認できても、2週間は自宅で待機しなくてはいけません。
戦いの長期化により現場が疲弊しているなか、上記経緯や離職などによりスタッフの規模が縮小していき、人手のやりくりが難しくなり、結果さらに疲弊する…という事態になってきました。この悪循環になんとか対策を打てないものか模索しています。
とはいえ、スタッフの手配に苦戦する理由は、感染や接触、離職といったスタッフ本人を原因とするものに限りません。
たとえば託児所の利用が制限され、勤務が難しくなるという問題があります。先日、筆者たちのグループが運営する子育て支援部門において、そこを利用するスタッフの家族が陽性であると判明しました。そのスタッフ自身は陰性で、一見、医療側への大きな影響はないように思われました。ところが、その子育て支援部門はグループ全体から多くの子どもを預かっているところです。スタッフの手配に苦戦するなかで、この事態は大きな痛手になると見込まれました。
園児が陽性になると、預かれる人数は通常の1/10程度になってしまうそうです。普段は複数の施設で300名ほどの子どもたちを預かっていますが、受け入れ規模が縮小してしまうと多くのスタッフが利用できなくなってしまいます。
働くうえでは子育て支援部門に頼らざるを得ないスタッフも少なくありません。すでに看護師などのシフトは何とかやりくりしている状態です。少しでもスタッフの負担を減らしたいこのタイミングにおいて、この事態は重くのしかかりました。
現状、人手確保の根幹は「基本的な感染対策」の徹底
人員の減少をできる限り抑えようと、緊急事態宣言が発令された地域へ出入りするスタッフを対象に、検査を実施していくことになりました。ちなみに当初よりスタッフ全員の検査を定期的に行えればよいと話しているものの、実現には至っていません。
結果、検査を受ける人の多くは「医師」という形になりました。もともと医師不足のいわき市において、地域の医療を支えるのは市外から通う医師たちです。医師以外はほとんどがいわき市内で生活していますが、多くの非常勤医師は首都圏から来ますし、平日はいわき市で仕事をし、週末は首都圏の自宅に戻るという常勤医師もいます。
スタッフに対して「市外に出ないように」と一律に求めることはできません。「こちらに来て陽性になって帰れなくなってしまっては、小さい子どもの面倒を見る人がいなくなる」、「勤務はしないということも考えざるを得ない」といった声もありました。
言うまでもなく医療従事者にも自身の家庭や生活があり、スタッフを確保するうえではこれらを無視することはできません。個々の事情にどう対処していくかを模索しています。自施設のスタッフの検査は、費用面を含め、まだまだこれから対策を考えなければなりません。
とにかく、スタッフ内でも感染対策をきっちりとすること、マスク着用や手指消毒をし、食事の仕方に気をつけるといった基本的なことの繰り返しです。
スタッフ減少は地域全体の問題
スタッフが減って困るのはその施設内だけではありません。患者さんや利用者さんの受け入れがそれまでのように続けられず、行き場をめぐり地域全体の問題になる事例が各所で見られます。県内や市内のコロナ対策会議でも、「介護施設で利用者、スタッフともに陽性者が発生したときに、利用者が回復したとしても、施設のスタッフが復帰できていないことがある。利用者の退院後の行き先は大丈夫か」という議論がなされるようになりました。入院中にADL(日常生動作)が低下してしまい、元の施設に戻れない、他の施設にも入れない、病床を使うしかない、という事態になってきます。
ワクチン接種の準備を進めていくと言っても、そのためだけに人員が補填されるわけではありません。なんとかやりくりする他ないのです。
杉山 宗志
ときわ会グループ
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