自立高齢者と要介護高齢者の共存に反対する理由
自立者と要介護者の混在には反対
その前に、きわめて重要な話をしておく必要があります。それは、老人ホームの入居者には大きく分けると、自立の高齢者と要介護状態の高齢者の2種類が存在しているという事実です。
私は、個人的には自立の高齢者と要介護高齢者が、一つ屋根の下に共存することは反対の立場です。なぜなら、自立と要介護の高齢者とでは、求められている介護支援がまったく違うからです。まったく違う以上、当然、介護職員が身に付けなければならないスキルも違います。
介護職員のスキルは、現在の社会現象を踏まえて考えてみても、その専門性が高まっています。つまり、自立の高齢者の介護支援が得意な介護職員もいれば、要介護状態の高齢者の介護支援が得意な介護職員もいるのです。
しかし、その両方が得意な介護職員はごく少数派なので、同じホーム内に自立、要介護の双方が混在している老人ホームは、介護職員のスキルを考えた場合、成り立たないというのが私の考えです。だから、自立者と要介護者の混在は反対であるということになります。
誤解のないように言っておきますが、老人ホーム介護の理想形は混在です。自立の高齢者も要介護状態の高齢者も一つ屋根の下で生活し、お互いに助け合いながら、ときには喧嘩もし、怒鳴り合ったりしながらも相手を受け入れること。大切なのは、介護業界で言われている相手の「あるがままを受け入れた生活」をすることだと思っています。
「他人のふり見て我がふり直せ」という言葉のとおり、認知症の入居者の様を見て、自分はしっかりしなければと心得る人もいれば、いずれ自分の行く道だと覚悟を決める人もいるのだと思います。これらのことを考えた場合、当然、混合型の老人ホームが理想だと思っています。
しかし、混合型の理想的な老人ホームを増やしていくには、介護職員のスキルアップを目指す必要がありますが、現状は、残念ながら真逆の方向に進んでいます。専門分野に特化し、この分野にのみ強い、というホームが増えているのが現状なのです。
そして私は、その状況はきわめて現実的なことであると理解しているので、介護職員は専門性に特化するべきであるとも言っています。なにやら、言っていることが支離滅裂だと思いの読者もいるかもしれませんが、理想と現実の双方を考えてみた場合、私はリアルな現実の中で生きている実務家なので、現実から目を背けることはできないのです。
繰り返しになりますが、理想的な老人ホームとは、さまざまな高齢者が一つ屋根の下で調和のとれた社会生活を送れるところです。しかし、現実的には、そういう社会生活を維持できる能力のある介護職員が皆無なために、介護職員の得意分野に特化した老人ホームにし、それに向いている入居者を集めることになる、ということなのです。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
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