もし親を老人ホームに入居させるとして、まず第一歩として何を理解しておけばいいのでしょうか。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が、親を老人ホームに入れようと思った時に「知っておきたい選び方、探し方」を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)から一部を抜粋、編集したものです。

老人ホームの予備知識や検討を怠ってはいけない

当然ですが、このようなケースがひっきりなしに起きていたのでは、老人ホームはすぐに潰れてしまいます。現時点で最も考えやすい老人ホームから在宅へ復帰していく背景とは、そもそも老人ホームに入居する必要がなかったのでは?ということだと、私は考えています。

 

小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)
小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)

もっとも、これからは老人ホームを社会資源として活用することの重要性が求められてくる時代です。一時的に入居する高齢者が増えていくのは、自然な現象だと考えています。

 

最後は、「他のホームへ引越し」の背景です。ここがホーム選びにとって一番重要な視点ですが、普通に考えた場合「入居前に受けた説明と実際に入居したところ、まったく内容が違う」という不満から他のホームに引越していくケースが容易に想定されます。「騙された」とか「ひどすぎる」とかいうものです。

 

しかし、ここでよく考えなければならないことは、本当に騙されたのか?ということではないでしょうか。

 

私の持論は「介護にも流派がある」というものです。そして、その流派に自分が合っていなければ、ホームの生活では不幸になります。人とは身勝手なもので、自分にとって都合の悪いことは、すべて人のせいにして結論づけて整理してしまいます。

 

私は、以前から、老人ホームは状態に応じて転々とするべきだと言っています。しかし、ここで取り上げた「他のホームへ引越し」は、私の言う「転々とするべき」とは少し違います。

 

入居ホームでの生活が嫌になって転々とすることと、身体の状態、精神の状態が変わったことによってホームを移ることでは、意味が違います。単に嫌になったという理由で次のホームに行くのであれば、行った先のホームでもハッピーになれる保証はありません。むしろ、同じことの繰り返しではないでしょうか?

 

私が言っている転々とは、お互いの経年変化によって、ホームの持っている機能と自分の欲している機能とにミスマッチがあった場合は、欲している視点を提供してくれる他のホームに引越せばよいという意味合いです。要は、入居する前にしっかりとしたホームに関する予備知識の修得や検討を怠ってはいけないということです。このことを肝に銘じてほしいと思います。

 

小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

 

 

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