「毎年確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年1月頃になるとこのような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているという。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

開業届は提出したほうが納税者にメリットが

正解:開業届を出さないと、青色申告にできない

 

個人事業を開業すると、 事業の開始日から1か月以内に、税務署等に「個人事業の開業・廃業等届出書」(以下、「開業届」)を提出する必要があります。

 

この開業届を出すべきかどうかを悩んでいる人は少なくないようです。というのも、法律上、「開業した」といえるのがどういった状況なのかが明確ではないからです。

 

しかも、開業届を出さなかったとしても、何か罰則を受けることはなく、税務署から「開業届を出してください」と連絡がくることも通常ないので、混乱する人が多いのもうなずけます。

 

開業届を出さなかったとしても、何か罰則を受けることはないという。(※写真はイメージです/PIXTA)
開業届を出さなかったとしても、何か罰則を受けることはないという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

とはいえ、開業届は基本的には提出したほうが納税者のメリットになるものです。なぜなら、開業届を出すことによって、はじめて個人がビジネスで得た所得が「事業所得」として取り扱われるようになり、青色申告の恩恵を受けることができるからです。

 

もし、開業届が出ていなければ、その所得は「雑所得」と判断されます。雑所得とは「他の9種類の所得のいずれにも当てはまらない所得」であり、副業で得た所得や、公的年金等が該当します。

 

つまり、「本業=事業所得」「副業=雑所得」というざっくりとした違いがあるのですが、税務署でいちいちこの判別をするわけにもいきません。何をもって本業かというのは、ひじょうに判断が難しいものです。

 

たとえば、ひとつの判断基準として、利益金額が考えられますが、本業のつもりで事業をしていても赤字になる可能性はあります。逆に、会社勤めをしながら、副業で会社の給与以上の収益を得る人もいるはずです。

 

このようなことを明確にするのは現実的に難しいので、「開業届が出ているかどうか」で判断されることになります。つまり、通常は開業届を出すことによって、はじめて事業所得として取り扱われるということです。事業所得であれば青色申告にすることもできるので、青色申告の特典を活用したいという人は、きちんと開業届を出すようにしましょう。

 

もしかすると、「副業でも、開業届を出せば青色申告にできるの?」と思われた方もいるかもしれませんが、これは何ともいえません。たしかに、開業届を出せば、ひとまずは事業所得として確定申告をすることができます。

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