「毎年確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年1月頃になるとこのような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているという。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

副業でも開業届を出したほうが得なのか

でも、あとで税務署が申告書をチェックしたときに、疑念をもたれる可能性はあります。とくに他に仕事をもっているような人は、要注意です。「この人は給与所得が1000万円もあるのに、事業所得もある。どういうことだろう?」と思われるかもしれません。

 

小林義崇著『確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!』(河出書房新社)
小林義崇著『確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!』(河出書房新社)

事業所得か雑所得かという問題については、過去に裁判で国と納税者が争いになったケースが何度かあります。この場合、その人の業務の内容や、お金の流れ、身体拘束の時間など、複数の要因から判断されています。

 

ちなみに、このような判例をふまえると、事業所得として認められるには、名刺をつくる、ホームページをつくるといった外形的なことも大切ですし、安定して収益を得られる状態であることも、ひとつの判断材料になるでしょう。

 

開業届を出すことによるデメリットも理解しておきましょう。こちらは国税ではなく、地方税に関する問題です。

 

地方税のなかには、「個人事業税」というものがあり、事業所得が300万円を超えると、個人事業税の対象となってしまいます。個人事業税の税率は業種によって異なりますが、たとえば東京都の場合、デザイナーは5%に設定されています。

 

とはいえ、個人事業税は年間290万円を超えた所得金額等に対して税率が適用されるものですから、そこまで重たい負担にはなりません。この点をふまえてもデメリットよりも青色申告のメリットが上回ると考えられますので、やはり開業届は提出しておくべきでしょう。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2020年12月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

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