近年では相続税の課税はますます重く、また、これまで許容されていた対策にも規制がかかるなど、非常に厳しいものとなっています。大切な資産を減らすことなく無事に相続を乗り切るには、どのような手段があるのでしょうか。「相続実務士」のもとに寄せられた相談実例をもとにプロフェッショナルが解説します。

兄が建てた二世帯住宅に、家賃を払って暮らす妹家族

今回の相談者は、50代の女性で専業主婦の遠藤さんです。遠藤さんは二世帯住宅で母親と暮らしています。1階が母親の自宅で、2階が遠藤さん家族の自宅となっています。

 

二世帯住宅は、父親が元気なころ、父親の土地に遠藤さんの兄がローンを組んで建てたものです。ところが完成後ほどなく、兄は仕事の都合で遠くへ転勤となり、2階が空き家になってしまったため、両親の老後を考え、妹の遠藤さんが住んだほうが安心ということになり、夫婦で同居をはじめたのです。

 

 

父親は8年前に亡くなり、自宅の土地は母親と兄が半分ずつ相続することで手続きされました。兄がすべて段取りしたため、遠藤さんはいわれるままに印を押した覚えがありますが、あまり記憶が明確ではなく、そのまま現在に至ります。

 

建物が兄名義でローンの返済もあるため、遠藤さんは兄に毎月家賃を払っています。兄家族は仕事の関係で当分の間、実家に戻る予定が立たないといいます。

 

母親も80代後半にさしかかり、いつ相続が発生するかわかりません。そうならないうちに不安を解消しておきたいと、遠藤さんはおひとりで相談に来られたのです。

そばにいない兄夫婦、母親の介護はすべて同居の娘が…

「父親が亡くなったときは母親も元気だったので、とくに父親の介護の不安はなかったのですが…」

 

「母は少し足が弱ってきましたが、それ以外はとくに悪いところもなく、頭もしっかりしています。でも、年齢を考えたら、近いうちに介護が必要になるかもしれませんし、場合によっては…」

 

遠藤さんは言葉を濁しながらも、心配そうにおっしゃいました。

 

母親の介護を担当するのは同居している遠藤さんです。母親も娘をとても頼りにしてくれていて、ご自分の財産は遠藤さんにすべて渡したいといってくれているそうです。

 

「私の母親の財産は、土地のほかに預金が1000万円ほどです。ですが、これからの生活や老後資金に充てる予定で、ほとんど残らないと思います」

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

「相続時精算課税制度」の活用を検討

筆者からは、母親に遺言書を書いてもらえば、亡くなったときに相続することも可能だと提案しましたが、遠藤さんはそれでは不安だといいます。

 

「兄も兄嫁も気が強くて、とても口達者なんです。とてもではないですが、私に太刀打ちできるとは思えません。相続の場になれば、なおさら兄の意見が強くなるかもしれませんし、母の遺言書があっても、それだけでは安心できないというか…」

 

遠藤さんは不安を隠しきれない様子です。

 

遠藤さんの母親は、相続になる前に贈与してもいいといってくれているそうですが、遠藤さんは、高額な贈与税の発生を懸念されていました。

 

遠藤さんがお住まいの土地の評価は約2000万円で、半分の1000万円が母親名義です。その場合、贈与税は約170万円になります。しかし、「相続時精算課税制度」を利用すれば、2500万円までの贈与でなら贈与税は課税されず、相続時に相続税で納税することになります。財産が基礎控除以内であれば相続税もかからないので、結果、贈与税も相続税もかからず財産をもらえるということです。

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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