「納期優先、コスト優先」下請け会社の厳しい事情
条件1:現場管理が元請会社の社員である
集合住宅の工事の過程には多くの業者が関わります。どの業者もできるだけ利益を上げたいと考えるのが一般的ですから、予定通りに現場を終えて、すぐに次の現場に移る場合も少なくありません。
すると、どうしても品質よりも納期が優先され、結果として、明らかにやり直しが必要な場所であっても隠蔽する、という事態につながりかねません。また予算が決まっていても、少しでも利益を多く残そうと考え、コスト圧縮を図る場合もあります。
あるいは、作業を早く終わらせるために、見えないところでコンクリートに余分に水を混ぜて、型枠への流し込み時間を短くしてしまう、という問題も横行しています。
これでは、コンクリートの品質を守ることはできません。
もちろん、良心的な業者も数多くあります。一方で、近年の建築ラッシュや深刻な人手不足で、手を抜きがちな職人に仕事を頼まざるを得ないケースが出てきてしまうのです。しかし、集合住宅はオーナーからすれば大事な資産であり、住み手からすれば命を守る器です。万一のことがあってからでは取り返しがつきません。
ですから、元請会社が現場監督となり、施工の過程において一から十までしっかりと目を光らせる必要があるのです。
元請会社は、1億円の予算があるとすれば1億円の予算を使い切って、次の受注につながるように、できるだけいいものを造ろうと考える場合がほとんどです。
また、施工不良は、5年後、6年後になって明らかになることが少なくありません。不測の事態になったときに、社員であれば、「誰が、あの物件の現場監督だったのか」と追及され、責任を問われます。会社に長く勤めようと思えば、決して、いい加減なことはできないのです。以上の理由から、元請会社の社員がしっかり現場監督をしていることが必要だといえます。
「報告書はあいまいに」品質をごまかす手法
条件2:工事中の現場を見せることができる
戸建ての場合、施工中の物件を施主が見に行くケースは多いと思います。
集合住宅でも、しっかり施工しているのであれば、オーナーが見に行ったときに「どうぞ」といって現場を見せることができるはずです。「危険ですからやめてください」などと拒否する場合には、見せられない不都合な事情があると考えてしかるべきです。
より安心できるのは、ISO9001などを取得している事業所です。
ISO9001は、製品やサービスの品質保証を通じて、顧客満足向上と品質マネジメントシステムの継続的な改善を実現する国際規格です。品質維持の体制に対して認証されている場合は、品質マネジメントシステムに基づいて何回もの検証や検査活動を行っていると考えられます。
そうした事業所であれば、施工の手順もきちんと確立されているはずです。
また何かクレームが起きたときにどう対応しているか、聞いてみるのもいいでしょう。施工ミスがあったときに誰が手直しの判断をして、「いつ」「どのように」直しているか、直したものについて「どこに」「どのように」報告書を出しているか、情報を公開できれば、しっかりした事業所といえます。
「いや、うちはミスはありませんから」「口頭で報告していますから、報告書はありません」といって詳細の報告を怠るような事業所は、建物の品質自体が低いことが少なくありません。