「外見」だけじゃわからない
都市部の限られた場所に立つマンションは「公共性」がキーワードになります。多くの人のニーズに合うデザインで、壊れづらく、修繕しながら使い続けられるマンションにするには、どのような条件が必要なのか、具体的に紹介していきます。
建物はよく人の体に例えられます。コンクリートが筋肉、設備配管が血管、鉄骨が骨、電気配線が神経で、外装は洋服のようなものです。もちろん見た目も大事ですが、やはり、外からは見えにくい「体」、つまり建物そのものがしっかり造られていないと、見た目がどんなにきらびやかであっても、不具合が生じて、どうしても寿命が短くなってしまうのです。
例えば人の体のなかでも、血液が流れる血管は、詰まったり破裂したりすると命に関わります。設備配管も同じで、もし詰まってしまうと建物に悪影響を与えてしまいます。外観にとらわれず、構造や内部についての条件もしっかり押さえておきましょう。
コンクリートのスランプ試験とは
条件①:使用するコンクリートの基準がしっかりできている
建物の筋肉といわれるのが、コンクリートです。体を支えるのに筋肉が欠かせないように、建物にとっても、コンクリートの強さが非常に重要です。では、その強さはどのように決まるのでしょうか。
そもそもコンクリートとはどのようなものなのか、からお話します。コンクリートは、セメント、水、細骨材(砂)、粗骨材(砂利)、混和材料から構成されます。混和材料とは打設作業(コンクリートを型枠に流し込む作業)をしやすくしたり、強度や耐久性を向上させたり、凝固速度を調整したりするためにコンクリートに混ぜる薬剤のことで、混ぜるのは比較的少量です。
コンクリートの強さは、「Fc:設計基準強度(建物の構造的強度)」「スランプ」「水セメント比」を見ると分かります。
Fcは、「Fc=18(N/mm2)」「Fc=24(N/mm2)」などと記されます。これは、それぞれ、「1平方ミリメートル当たり18ニュートン」まで、「1平方ミリメートル当たり24ニュートン」まで耐えられる、という意味になります。
鉄筋コンクリート造りの集合住宅の場合は、Fc=24以上であることが望ましいです。
スランプは、生コンクリートの軟らかさを表します。これは、スランプ実験で求めます。以下の図表1のように、高さ30㎝の円錐形の容器(スランプコーン)に生コンクリートを詰めて引き抜き、どれだけ頂点が下がったかを計ります。
頂点が5cm下がれば「スランプ5cm」となります。軟らかいほど、スランプの値は大きくなり、一般には次のような目安があります。
●建築物用(ビル、マンション等)→15〜18cm程度の軟らかい生コンクリート
●土木構造物用(ダム、道路等)→5〜12cm程度の硬い生コンクリート
条件②:使用されているコンクリートの水セメント比が60%以下である
コンクリートの強度を表すもう一つの指標「水セメント比」は、水とセメントとの割合で「水量÷セメント量」の百分率で示されます。水が50Ⅼ、セメントが100kgの場合は、水セメント比50%となります。
水が多いほど練りやすく、型枠にも打ち込みやすくなりますが、コンクリートの強度は低下します。水セメント比が低いコンクリートのほうが、強度も品質も高くなります。住宅金融支援機構では、水セメント比の最大値を、一般的なコンクリートの場合で65%と定めています。自社の基準として、それよりも低い60%以下に設定している事業所であれば安心といえます。