「等分にカットしたホールケーキは誰のもの?」
理由1 共有状態の解消:処分に共有者全員の同意が必要な不動産の売却
不動産は共有状態のままでいると、多くの問題が起こり得ます。例えば、4人で土地を所有している場合、それぞれの所有権は「持分」という割合で決まっています。4人が平等に4分の1ずつ持分を所有している場合や、各人で持分に偏りがある場合などパターンは様々ですが、いずれにしても4人で全体を所有しているという状態です。
つまり、どこからどこまでがAさんの持分で、ここからここまでがBさんの持分というような物理的な線引きはされていません。このことがトラブルの元になってしまうのです。
分かりやすく言うと、土地の共有は「1ホールのケーキを丸ごと4人で持っている」ようなものです。4分の1ずつカットされていれば、自分の分を食べようと、他人に譲ろうと、捨ててしまおうと、その人の自由ですが、4人で1ホールとなると、そうはいきません。
自分は「ケーキなんかいらない。人に売ってしまいたい」と思っても、全員の合意がなくては自由にできないのです。4人の所有者のうち3人が「この土地はもう活用することができないから、売ってしまおう」と判断したとしても、残りの1人が「まだ売りたくない」と反対したら、売ることはできません。
こうしたケースでは、売りたい3人と所有を続けたい1人とで、いざこざが起こるリスクが高いのです。
このように、共有状態の不動産は、活用するにしても売却するにしても、何かにつけて全員の同意が必要となりますから、それだけ流動性が低く、活用の範囲も狭まってしまう使いにくい資産ということになります。
そこで、それを解決するための1つの選択肢として出てくるのが、売却による換金をして、お金で分割するという方法です。
不動産のまま分割するという選択肢もあるにはありますが、不動産が簡単には分けられないということを考えなければなりません。土地で言えば単純に4分の1ずつの面積で分ければいいと考えるかもしれませんが、道路に面した部分と道路から奥まった部分では、使い勝手も市場価値も変わってきてしまうので公平に分割するのが難しくなります。
何とか金額的に等分になるように計算して分けたとしても、分割の結果、土地が狭くなってしまうと価値が低くなってしまうこともあります。そういった点を踏まえると、現金にしてしまえば、価値は変わらないままいかようにも分けられますから、所有者同士で不平不満が出にくく、すっきりと片付きやすいのです。
ちなみに、このような不便な不動産の共有状態は、相続のときに生じやすくなります。なぜかと言えば、民法が共同相続を原則としているからです。また、この後で説明する「離婚」でも、夫婦間の共有状態が多く見られます。