「目が悪いので転びました」という患者さんが続出
もっと身近な例でいえば、目がよく見えるかどうかは私たちの「健康寿命」にも関わります。健康寿命とは、介護を受けずに元気でいられる期間のことをいいます。
日本は世界のなかでもトップクラスの長寿国ですが、平均寿命と健康寿命の間にまだまだ差があります。その差は男性で約8年、女性で約12年といわれています。せっかく長生きをしても寝たきりのまま…、というのは誰にとってもうれしいことではないので、健康寿命をできる限り延ばそうということが叫ばれています。
皆さんのなかにも栄養バランスに気を付けて食事をしたり、ウォーキングやスポーツで身体を動かしたりする人も多いのではないでしょうか。
筆者が皆さんに知ってほしいのは、健康寿命を延ばすためには、実は「目」も非常に重要だということです。なぜなら「目が悪いので転びました」と言う患者さんが、あとを絶たないからです。
足元の段差や障害物、自転車の接近などに気づかずに、「あっ」と思ったときには転んでいたという人は非常に多いです。年を取ると骨も弱ってしまっているため、ただ転んだりつまずいたりするだけで骨折し、いきなり介護が必要になってしまう人もいます。
それでなくとも目が悪くなっていると、慣れない場所はもちろん、病院などへも一人で行くのが不安になり、出歩く機会がだんだん減ってしまいます。すると足腰も弱くなりますし、頭を使うことも減って、脳の働きが弱まり、認知症のリスクにもつながります。
車を運転する人であれば、さらに目の重要性を実感しているはずです。
年を取って目が衰えてくると雨の日や夕暮れどきなどに、とても視界が悪くなります。夜間の運転でも、黒っぽい服の人が見えにくく、危うく事故を起こしそうになって自信を失ってしまった…。そんな話もよく耳にします。
都市部であれば、公共交通機関が発達しているので、車の運転を諦めてもまだ電車やバスなどの代わりの手段があります。しかし、田舎のほうでは車に乗れないと買い物や病院に行くことすら難しく、生活が成り立たない地域もあるため、問題はより深刻になります。
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