「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

認知症父パスポート持参でデイサービスに

お寿司を食べに、満洲へ

 

ある朝、「おい、パスポートを用意してくれ」とじーじ。一昨年、トランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長が会談するというニュースがTVで流れていた頃、同じデイサービスを利用している流暢な中国語を話す中国の要人(じーじ曰く)と「一緒に会談に参加することになったので、シンガポールに行く」と言って、毎日デイサービスにパスポートを持参していたことがあった。

 

黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)
黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)

じーじの言う中国の要人は、横浜中華街でお土産用に売ってるチャイナハットをかぶり、何かにつけて「谢谢」と言う利用者さんだったのだが、今回はどんなことになるのだろうとウキウキしながら、期限切れのじーじのパスポートを渡したところ。

 

「デイサービスにな、徳川幕府に仕えていた豪商の人がいてな。その人はその後、満州で過ごしたから、俺と話が合うんだよ」とじーじ。

 

徳川幕府で豪商で、その後満州に渡った? どう考えても長生き過ぎる利用者さんだが、まあ、気にしないことにして話の続きを聞いてみることに。

 

「その人はな、ユダヤ系の人で、金持ちなんだよ。大宮の駅前の高層マンションに住んでいるからとんでもない金持ちだ」

 

徳川時代にユダヤ系の人が日本にいたのか!と感心しながら話を聞いていると話はますます壮大に。

 

「でな、奥さんはイギリス人かフランス人かカナダ人らしい」

 

「奥さん外人さんなんだね」と尋ねると「いや、太っているから外人だ」と、もう、わけがわからん方向へ。そこで、パスポートのことを聞いてみると「その人と一緒に満州に寿司を食いに行く約束をしたから、お前も一緒に行ってくれ」と言うではないか!

 

「私のパスポートは期限が切れているからすぐには行けないよ」と言うと、「大丈夫だ。お前と俺のパスポートは期限を延長してもらうように、日中友好協会の埼玉支部長に頼んであるから。いつでも行けるように用意をしておくんだぞ」とじーじ。

 

すっかり、満州にお寿司を食べに行く気満々のじーじなのであった。

 

黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

 

 

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