「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

濃厚接触は脳梗塞、少額投資非課税制度は…

聞きまちがい

 

実はじーじ、無口な人なのである。認知星人に変身すると、急に饒舌になるのだが、それ以外はあまり口をきかない。この日は、息子(私の弟)が帰って来たので朝からご機嫌。昼からビールを飲み、日頃の私への不満を話している。

 

この光景、まさしく「在宅介護あるある」。毎日お世話をしている人には決して見せないような笑顔で、お世話している人を悪く言うあれですよ!

 

ちょっと、イラッとしたので「何話してるの?」と聞いてみた。「お! 今コロナウイルスの話をしてたんだ」とじーじ。素晴らしい状況判断と、素早い切り替えし! まだまだ、判断力は残っているなとひと安心。

 

息子(私の弟)が帰って来たので朝からご機嫌だったのだが…。(※写真はイメージです/PIXTA)
息子(私の弟)が帰って来たので朝からご機嫌だったのだが…。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「都内は感染した人がいるからお前も気をつけろよ。マスクにうがい手洗いを忘れずにな」と、息子の心配をするじーじ。

 

「でもさあ、通勤時間帯は乗車率がすごいから、どうしたって濃厚接触は避けられないからなあ」

 

「なに、脳梗塞! 若いのに脳梗塞になったのか? ガガガっていう機械(MRIのことらしい)に入って検査したか?」

 

どうやら、濃厚接触が脳梗塞に聞こえたらしい。

 

「へ? 脳梗塞? あ! 俺じゃなくて知り合いの人の話だよ」と、さすが弟、うまく話を切り替えた。それから先は、すっかり脳梗塞の話題になり、自分は2回も脳梗塞を起こしたのに、麻痺が残っていないと自慢げに話すのであった。

 

その後、話題は今じーじの一番の関心事の株の話に! 株の話は厄介なことになると内心ヒヤヒヤしながら聞いていると。

 

「俺はなNISAを始めてな、株で一儲けしようと思っているんだが、ところでお前、NISAって知ってるか?」

 

とじーじ。つい最近株で7千500万円の損失を出した(妄想)と大騒ぎしたしたことはすっかり忘れているらしい。

 

「知ってるよ、少額投資非課税制度のことだろ」
「なに? 正月?」

 

今度は、少額が正月に聞こえたらしい。

 

「もう正月か! この間、正月が来たばかりだと思っていたが、1年が過ぎるのは早いなあ……」しみじみと遠くを眺めるじーじ。

 

イヤイヤ! お正月まではまだ、10か月ありますから~!

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認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

黒川 玲子

海竜社

わけのわからない行動や言葉を発する前に必ず、じーっと一点を見据えていることを発見! その姿は、どこか遠い星と交信しているように見えた。その日以来私は、認知症の周辺症状が現れた時のじーじを 「認知症のスイッチが入っ…

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