聞けば聞くほど奇怪な話。とにかく本人に会いに行く。
個室に移ったら移ったで、猿が十何匹も壁にへばりついてると言ったり、誰かが何やら言ってうるさいとか独り言を言って、一晩中寝なかったらしい。聞けば聞くほど奇怪な話だった。
婦長さんによれば多分環境が変わったせいで急に痴呆になったのかもしれないとのことだった。
とにかく本人に会いに行く。
「昨日来なかったら、えらいことになっているやないの」と言うと、「何でや知らんけどこんなとこに入れられてん。廊下通る人が皆うち見ていかはるわ」
広い二人部屋の入り口は開けられ、重いストレッチャーなどで出られないようにしてある。ベッドに腰掛けている姑は何ら変わりないように見えた。パジャマも着ず普段着だった。
「公ちゃん、おじいさんの葬式もう済んだ?」といきなり変なことを言う。おじいちゃんはちゃんと生きていて一緒に家に居ると言うと、舅が死んで隣のベッドに寝かされていたのに生きてるのと不思議そうに言う。