入院中に大腿骨を骨折した姑。手術は成功した一方で、介護の負担が減ることはなかった。息子夫婦の協力によってつかの間の休息をとることができたものの、癇に障るお見舞いや姑の理解できない言動に今後への不安が募っていく。 ※幻冬舎ゴールドライフオンラインの人気エッセイ『嫁姑奮戦記』を連載でお届けします。

ふらつくからもう行けへん。

外泊当日は意外と平静であった。妄想がなくなって良かった。入浴させて午前中に帰宅する。

 

「やっぱり家はいいわあ」と本当に嬉しそうだ。全く以前と変わりない。ただ脚が不自由で畳に座れないくらいのものだ。ベッドがまだ届いていないのでテーブルと椅子で過ごしてもらう。夜は私が横に寝たものの、介助するのは布団から起き上がる時と、トイレに連れて行くくらいで、病院での生活からは考えられない平穏な外泊であった。

 

(画像はイメージです/PIXTA)
(画像はイメージです/PIXTA)

 

近所の方々も早速様子を見に来てくださり、姑も家に帰った実感を味わったことだろう。

 

外泊二日も無事終わり、翌朝病院に帰るとなると、ふらつくからもう行けへん。このまま家に居るわと言う。約束やからと説得して、娘と二人で連れて行く。ふらつきの原因は薬の副作用かと心配したが、今までそのようなことはなかったことから、病院に戻りたくないという気持ちからきたものかもしれない。

 

先生や看護婦さんから様子を聞かれる。以前の姑に戻って錯乱も全くなく穏やかに過ごしたと報告するとびっくりされ、一日も早く退院されたほうが良いかもしれませ んね、と言われる。午後の部長回診で二日後に退院と具体的に決まる。

 

「おばあちゃん、良かったね、明後日退院だって」と言うと「そう」と気のない返事。かえって不気味だ。食後睡眠薬を飲ませると早くから寝る。このまま寝てくれたらとの願いも空しく十一時にけろっと起き、例のごとく動き回る。

 

布団をたたんでは広げ、広げてはたたみ、揚句は下に落とす。お尻の下のバスタオルを引っ張り下に投げ捨てる。お決まりのパターンを今日もやる。眠りそうもないので車椅子に乗せロビーに連れて行き夜景を見せる。あたりはしんと静まりかえっている。

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    大野 公子

    幻冬舎メディアコンサルティング

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