受理された「遺産分割調停申立書」を遺産分割係が確認
「おはようございます」
書記官室に稲葉書記官の大きな声が響いた。稲葉は、昨年4月に書記官に任官し、当初は受付係に配属になったが、この4月に遺産分割係に配置換えになった若手の書記官である。
「毎朝、元気いいね」
小林主任書記官が抗告事件の記録の査閲をしながら、返事をした。小林は、遺産分割係の立ち上げ時に配属されたが、その後、数回の異動を経て、主任書記官に昇任し、この4月に再び遺産分割係の主任書記官として配属になった。
「あれからもう9年も経つのか」
小林がいない間に係も部屋替えがあったり、メンバーが替わったりと当時とは様相を異にしていた。
「初心、忘るべからずだな」と感慨に浸っていると、「新件お願いします」といつものように受付係の職員が、昨日受理した事件記録の引継ぎに来た。
川人事務官が手際よく事件記録を受け取った。
「主任、点検してからお持ちします」
30分ほど経って、川人が記録を持ってきた。
「法定相続情報一覧図の写しが添付されています。相続関係はそれほど複雑でもありませんが、戸籍が一部不足しています。森下書記官にも見てもらいました」
森下は、書記官経験10年で、民事事件、民事執行事件等を経験した後、一昨年から遺産分割係に配属になった中堅書記官である。後輩指導に熱心で、稲葉のみならず川人にも戸籍の確認方法など日頃教えている姿をよく見かけている。
「受付係からの引継ぎによると特別寄与料請求の申立てがあるかもしれないですよ」
「さすがだね。ありがとう」
小林は、記録をめくりながら検討を始めた。
配偶者と子が2人、代襲相続人が1人か…。確かに川人が言うように相続関係は複雑ではないな。遺産は、自宅の土地建物と畑3筆、預金、株式か…。
おっ…。そのうち2筆の土地だけ先に分割を求める一部分割の申立てか。相手方から他に遺産も主張される可能性があるけど、土地には抵当権も設定されていないし、権利関係も複雑ではないようだな。
「順番だと、それ、僕の担当じゃないですか?」
稲葉が小林に対し申し出た。
「畑の一部分割を求めている事件だけど」
「ぜひ、担当させてください」
「じゃあ、森下さんにフォローしてもらおう。森下さん、稲葉さんに色々教えてやってくれるかな」
「了解しました。はじめの一歩が大切ですからね。じゃあ、まず記録を読むところから始めようか。まず、申立書の形式的な記載事項が提出された書類と一致しているかを確認しよう。相続関係と遺産関係の点は確認済みだけど、相続人の戸籍が不足しているようだね。これが終わったら、前提問題を見ていこう」
稲葉は事情説明書を上から順番に確認し始めた。
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