「森下さん。遺言書がありますよ。検認申立ては、既に終了しています」
申立人から提出された検認調書の写しによれば、3通の遺言書は無効となる可能性があることが分かった。
「なるほど、それで、遺産分割調停か。他に問題になることはあるかな」
「受付段階での話によれば、二男の祐人さんが農業に関して家業従事型の寄与分を主張する可能性があります。それと三男の配偶者が特別寄与料を請求するかもしれません。身分関係ですが、相続人全員の現在戸籍が不足しています。」
稲葉と森下は、記録を見ながら一通りの問題点を把握した。
「じゃあ、問題点を書いて、裁判官に記録を上げてください」
稲葉は、問題点を記載したメモを作成し、山崎彩裁判官に記録を上げた。
山崎からは、相続人全員の戸籍の追完を求め、その提出を受けて期日を指定するよう指示がなされた。そして、調停委員として、ベテランの石原亮恵委員と経験の浅い杉浦虎太郎委員が指定された。
「どんな遺言書だった?」
「遺言書は確認したかい」
森下が裁判官室から戻った記録を読んでいた稲葉に声をかけた。
「一応読みました」
「どんな遺言書だった」
「え~っと、3通の遺言書があって、2通は確か3人の息子にそれぞれ相続させるって内容だったと思います」
「いわゆる『相続させる』旨の遺言だったよね。じゃあ質問だけど、『相続させる』旨の遺言はどういう効力があるのかな」
「確か死亡時に直ちに相続人に相続承継されるんだったと…」
「そのとおり。じゃあ登記手続は誰ができるのかな」
「直ちに相続されるから、被相続人名義なら相続人自ら相続登記ができるんじゃないかと思います」
「相続法の改正により、『特定財産承継遺言』が規定されたから、『させる旨の遺言』との概念の違いを理解しておこう。それに、特定財産承継遺言については、対抗要件主義がとられたから、実務上大きな影響があるので、勉強しておこう。それと、3通目の遺言書は『相続分の指定』に当たり…」
森下が続きを話そうとしている脇を数名の調停委員が書記官室に入ってきた。
「もう期日が始まるね。続きは後にしよう」
森下がそう言うと、稲葉は会話を止め、調停委員に順番にそれぞれの調停記録を渡し始めた。
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