「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

認知症父「香典は30万円、祝儀袋も用意しろ」

じーじ、フォースの暗黒面に囚われる

 

暮れからお正月の期間は、なぜか認知星人度がバージョンアップする。昨年も様々な事件を引き起こしたじーじであったが、今年のお正月も波瀾万丈であった。

 

黒川家の元旦は、じーじの今年1年の抱負で始まる。今年の抱負は「家族元気に過ごせるように」と、いたって穏やかだったが、事件は起こった。

 

黒川家の元旦は、じーじの今年1年の抱負で始まるという。そこで事件は起こった。(※写真はイメージです/PIXTA)
黒川家の元旦は、じーじの今年1年の抱負で始まるという。そこで事件は起こった。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「Mさんのおやじが亡くなったから香典を用意しろ」
「Mさんのおじさんはさっき会ったけど、元気だよ」
「そんなことはない、それなら、お前が見たのは幽霊だ」
「へ?Mさんでしょ?」
「そうだ、Mさんのおやじだ。さんざん世話になったから、香典は30万円だな、あと、お祝い金を持って行くからご祝儀袋も用意しろ」

 

私の頭の中は、Mさんて?誰?香典30万?なんて金額だ!それにプラスご祝儀だとぉ~と、何がなにやらさっぱり理解できないので「香典とご祝儀はおかしいかもよ?」と言ったところ、認知星人のスイッチON!

 

「何を言っているんだ、人は死んでから32年たつと仏になるからめでたいのだ。だからご祝儀も持っていくのが当たり前なんだ。お前はそんなことも知らんのか」

 

へ?さっき「Mさんのおやじが亡くなった」って言ったじゃないと思いつつ、話を聞いていると、どうやら、裏の家のMさんではなく、32年前に亡くなったMさんのことらしい。おまけに、Mさんの家では、盛大に祝宴が執り行われるからお前も一緒に行けと言うではないか。

 

このまま一緒にいると大変なことになると思い、弟には悪いがお世話を頼んで正月早々買い物に出かけることに。昨年弟は、認知星人の攻撃に負けて早々と家に帰ってしまったが、今年は頑張ってくれている。

 

だが、数分後。弟から「オヤジがいろいろ大変です。早く帰ってきてください」とのHELP要請が!あわてて帰ると、スーハー、スーハーと不気味な鼻息をたて、「家が……。土地が……、墓が……、仏壇が……」と言いながら、すり足で家の中を動きまわるじーじ。

 

まるでダース・ベイダーの様相。黒川家は一気に暗黒の世界へ。さあ、どうする黒川家。

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認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

黒川 玲子

海竜社

わけのわからない行動や言葉を発する前に必ず、じーっと一点を見据えていることを発見! その姿は、どこか遠い星と交信しているように見えた。その日以来私は、認知症の周辺症状が現れた時のじーじを 「認知症のスイッチが入っ…

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