認知症父「香典は30万円、祝儀袋も用意しろ」
じーじ、フォースの暗黒面に囚われる
暮れからお正月の期間は、なぜか認知星人度がバージョンアップする。昨年も様々な事件を引き起こしたじーじであったが、今年のお正月も波瀾万丈であった。
黒川家の元旦は、じーじの今年1年の抱負で始まる。今年の抱負は「家族元気に過ごせるように」と、いたって穏やかだったが、事件は起こった。
「Mさんのおやじが亡くなったから香典を用意しろ」
「Mさんのおじさんはさっき会ったけど、元気だよ」
「そんなことはない、それなら、お前が見たのは幽霊だ」
「へ?Mさんでしょ?」
「そうだ、Mさんのおやじだ。さんざん世話になったから、香典は30万円だな、あと、お祝い金を持って行くからご祝儀袋も用意しろ」
私の頭の中は、Mさんて?誰?香典30万?なんて金額だ!それにプラスご祝儀だとぉ~と、何がなにやらさっぱり理解できないので「香典とご祝儀はおかしいかもよ?」と言ったところ、認知星人のスイッチON!
「何を言っているんだ、人は死んでから32年たつと仏になるからめでたいのだ。だからご祝儀も持っていくのが当たり前なんだ。お前はそんなことも知らんのか」
へ?さっき「Mさんのおやじが亡くなった」って言ったじゃないと思いつつ、話を聞いていると、どうやら、裏の家のMさんではなく、32年前に亡くなったMさんのことらしい。おまけに、Mさんの家では、盛大に祝宴が執り行われるからお前も一緒に行けと言うではないか。
このまま一緒にいると大変なことになると思い、弟には悪いがお世話を頼んで正月早々買い物に出かけることに。昨年弟は、認知星人の攻撃に負けて早々と家に帰ってしまったが、今年は頑張ってくれている。
だが、数分後。弟から「オヤジがいろいろ大変です。早く帰ってきてください」とのHELP要請が!あわてて帰ると、スーハー、スーハーと不気味な鼻息をたて、「家が……。土地が……、墓が……、仏壇が……」と言いながら、すり足で家の中を動きまわるじーじ。
まるでダース・ベイダーの様相。黒川家は一気に暗黒の世界へ。さあ、どうする黒川家。